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日本語教師のアンガーマネジメント ~「言い過ぎた…」を防ぐために~
日本語教師に必要な資質は「忍耐」!?
以前、私は尊敬する日本語教師の先輩に「良い日本語教師の資質って何だと思いますか?」と質問をしたことがあります。即答されました。「忍耐ですね」と。
忍耐…patience…。たしかに日本語教師には粘り強さ・我慢強さが求められるかもしれません。
「何度も同じことを説明しているのに、なかなか理解してくれない」「また同じところで間違えている。これで何度目!?」「毎回遅刻してくる。なんでそんなにルーズなの?」「しょっちゅう直前キャンセルされる。こっちだって予定を開けているのに!」「グループレッスンについて来れていないのに、全然予習をしてこない…」「上達したいなら、せめて宿題ぐらいはしてほしい…」
このような思いを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
忍耐に忍耐を重ねるような状態は、ただの我慢大会になってしまい、精神衛生上良くありません。かといって、怒りや不機嫌を顔に出してしまったり、必要以上に強い言葉で叱ってしまったりするのも良くありませんよね。
人材育成の場でも、「部下を注意したいけどパワハラと言われるのが怖いし、かといって注意しないわけにもいかないし…」「この前もついカッとなって、強く言い過ぎてしまった…」「後輩を叱ったら、何も報告してくれなくなってしまった…」という管理者やOJT担当者のお話はよく耳にします。
ということで、今回は「言い過ぎた…」を防ぐために、怒りの感情のコントロールについて考えていきたいと思います。
怒りのメカニズム…「怒り」は悪い感情なのか?
「怒りっぽい人」「怒ったらパワハラになるよ」「こんな小さなことで怒るなんて…」という言葉からは、怒り=悪いことという認識がうかがえます。
しかし、そもそも怒りは悪い感情なのでしょうか?そんなことはありませんよね。人間である限り、怒りという感情をなくすことはできませんし、怒ることがすべて悪いとも限りません。
大切なことは、怒りの感情をコントロールして、怒る必要のないことは怒らなくて済むようになることです。また、時には適切に怒ることも必要でしょう。そのためにも、怒りのメカニズムを知ることは役に立ちます。
怒りのもとは「べき思考」
怒りという感情は、その人の価値観や考え方と密接に結びついていると言われています。ちょっぴり専門的なお話になりますが、これは認知の歪みの中でも「べき思考」が関係しています。
例えば、電車の中などの公共の場で子供が騒いでいるのに、その子供の親が一切注意をせずスマホばかり見ている状況に出会ったとします。この時、「他者に迷惑をかけてはならない」「公共の場では静かにするべき」「子供の注意は親がするべき」という「べき思考」が強ければ強いほど、怒りも強くなりやすくなります。
他の例として、ニュースで戦火に苦しむ民衆が映し出されたとします。「こんな非道なことするべきじゃない」「国際社会は終戦のためにもっと尽力すべき」など、ここでも「べき思考」が働きます。これは悪い感情でしょうか?「べき思考」が強いということは、正義感や責任感が強いということでもあります。
ただ、「〜すべき」や「〜してはならない」といった思考に取りつかれてしまうと、自分を追い詰めたり、「〜すべきでなかった」と過去のことをあれこれ悔やんだりしていまいます。
さらに、べき思考の強い人は自分だけでなく、他者にも厳しくなる傾向があるため、他者に憤りを感じる機会も増え、対人関係上でのトラブルに発展しやすくなります。
怒りとホルモンとの関係
怒りの原因を別の側面からも見てみましょう。怒りは認知的な要因だけでなく、ホルモンも関係しています。人間は怒りを感じると、アドレナリンというホルモンを大量に分泌します。アドレナリンによって心拍数や血糖値が上昇し、体は興奮状態に陥ります。それで冷静な判断ができなくなり、強い言葉を発したり、きつい行動をとったりしてしまうのです。
さらに女性の場合は、出産や育児・介護などのライフスタイルの変化によって、精神の安定をつかさどるセロトニンと呼ばれるホルモンが激減しやすいと言われています。
セロトニンは適度な運動や睡眠によって増えますが、子育てや介護に追われる方の多くは、寝不足で疲れています。セロトニンは増えないわ、アドレナリンは分泌されやすい状況にあるわで、イライラすることが少なかった優しい人でも、つい言葉遣いが荒くなってしまう…というわけです。
怒りを感じた時の対処法
ここからは、アンガーマネジメントの方法をいくつかご紹介します。①は状況的に難しいかもしれませんが、②と③は私も実践しております。
①いったんその場を離れる
感情的になっている自分を認識したら、頭を冷やすためにとにかくその怒りの原因となっている人や物からちょっと距離を取ります。でもレッスン中はさすがに難しいですかね…。
②気持ちを切り替えられる呪文を用意しておく
怒りを感じて、それが顔に出そうになったら、心の中で自分に語りかける言葉を用意しておきます。
例えば「大丈夫、大丈夫」「知らんけど」「ま、いいか」「今日はケーキ食べよう」など、自分が冷静さを取り戻す言葉ならなんでもOKです。
ちなみに私は「どうせ100年後にはあなたも私もこの世にいない」と心の中で唱えます。小さなことはどうでもよくなります(笑)
③意識的にゆっくり呼吸する
アドレナリンが分泌されると、呼吸が浅く速くなります。ですから逆に呼吸をコントロールすることで、感情もコントロールしやすくなるというわけです。
4秒かけて吸ったら、8秒かけてゆっくり吐き出します。ポイントは、吸うときより吐くときを長くすることです。これはストレスマネジメントの本などによく載っているだけあって、手軽ですが王道の方法です。
怒りの感情をコントロールする以前に大切なこと
さて、ここまで怒りが湧いた時の対処法をご紹介しましたが、怒りの感情をコントロールする以前に大切なことが2つあります。それは「体を休めること」と「自分の怒りポイントを知っておくこと」です。
対処法のその前のポイント①
まず、体を休めることについて。怒りは二次感情と呼ばれています。怒りを感じる前に、一次感情と言われるさまざまな思いを抱いています。つらい、悲しい、寂しい、疲れた、心配、不安といったものです。二次感情を発生させるこうした一次感情が積み重なった「いっぱいいっぱいの状態」の時は、怒りのコントロールは困難になります。
あなたは「いっぱいいっぱいの状態」になっているサインを無視していませんか?体や心からの黄色信号に気づき、赤信号にならないよう意識的に休むようにしましょう。ちなみに私の場合は、肩こりがひどくなる・頭痛が激しくなる・本を読まなくなる…この3つが出てくると黄色信号です。「あとちょっとだけ頑張る」を放り出し、さっさと寝ます。
対処法のその前のポイント②
次に、自分の怒りポイントを知っておくこと。自分がどのようなときに感情的になりやすいのかを把握しておくこと(=外在化)も大切です。怒りというのはとても衝動的で、そして強大な感情です。怒りをコントロールするのは、暴れ馬を制御するのに似ています。
怒りが沸いたのはどのような状況だったか、その時どのような「べき思考」が働いていたか、別の考えをしてみることはできるか、次に同じ状況になったとしたらどのように対処するか…そのような準備なくして、暴れ馬を乗りこなすのは難しいでしょう。
まずは自分を労わろう
今回は感情的にドッカーーン→後悔…とならないためのアンガーマネジメントについて取り上げました。
怒りに限らず、自分でコントロールできないくらい感情が上下に大きく振れてしまうのは、いつも頑張りすぎて意志力が枯渇している可能性があります。
怒りをコントロールするための意志力の回復方法や、怒りを感じる場面でどのようにコミュニケーションをとっていくかは、別の機会があれば記事にしたいと思います。
…というわけでここまで読んでくださった方、そう!あなたです!ご自身のアンガーマネジメントのためにも、いいレッスンを提供するためにも、今日はカロリーなんて気にせず好物を食べ、ゆっくりとお風呂につかり、たっぷり寝て体を休めてくださいね!
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