日本語教育能力検定試験対策 no.4 :誤用と訂正
検定試験には「誤用」についての問題が出題されます。なぜでしょうか。
学習者の発話で私たちは「なんか変」と感じる場面が日常的にあります。学習者の誤用、この「なんか変」にどう対応するか。これは日本語教師としての腕の見せ所だったりします。訂正の仕方はもちろん、誤用に対して正しく対応するにはどうして間違えたのかを論理的に分析する必要があります。そして、それをどう直すかも大切です。
これは現場でも知っておくと必ず役立つ知識の一つですので、ぜひ覚えておいてほしいなと思います。
誤用の種類
誤用にはミステイクとエラーがあります。
ミステイクはすぐに訂正ができるもの、単なる言い間違いのことです。
もう一つはエラー。エラーは理解不足で繰り返し起こしてしまう間違いのことです。このエラーの中には、コミュニケーションする上で、聞き手に話しての意図が伝わらないなど大きな支障を与えるエラー(グローバルエラー)と、間違えてもあまり支障がないエラー(ローカルエラー)があります。
おししいのパン ←ローカルエラー(間違っていても意味はわかる)
お店を買いに行きました ←グローバルエラー(店を買収でもするのか?)
エラーは誤用が起きる原因によっても分類されます。そのエラーの原因がどこにあるのか、その言語にあるのか違う言語にあるのかによって、言語内エラーと言語間エラーがあります。
たとえば、「ピアノを遊ぶ」。これは英語の「play」をそのまま日本語の「遊ぶ」と当てはめてしまうようなエラーです。母語が原因で起きてしまうエラーを言語間エラーと言います。「お金を作りたいです」(えっと、造幣局で働きたいってこと?それとも偽札でも作るの??ってそんなわけはないですね(笑)。
一方の言語内エラーは目標言語の学習過程で起きる発達途上のエラーのことです。「面白いでした」「おいしいのパン」「するだから」「今、バスに乗りています」「いいだと思います」「短くになる」など(お〜、果てしなく出てくる・・・笑)のように、特定のルールを過剰に一般化させてしまうことがよくありますね。これを過剰般化(過剰一般化)と言います。そして、このような誤用が上級者になっても残ってしまうケースもよくありますね。そのまま過剰般化が定着してしまうことを「化石化」と言います。
言語内エラーのもう一つは簡略化です。「わたし しごと 行きます」など、複雑な(めんどくさい)ルールを避けて簡単にしようとして起きるエラーです。
学習者が自信のない語彙、文法、発音の使用を避け、自分が言える言葉で簡単に言い換えるケースもあります。現場では、もうちょっとチャレンジできるはずなのにともどかしくなることがあります。誤用には表面上に出て認識できるものもあれば、回避によって誤用として認識できないパターンもあります。
訂正フィードバック
言語を覚えるときに、誤用はつきものです。レッスンで「なんか変」と感じ、日本語教師が誤用を訂正する場面は多々あります。誤用は学習者の日本語レベル・理解レベルを知るヒントになりますので、私たち日本語教師にとって非常に貴重なものです。この学習者の誤用に対して、言い直したり、説明したりすることを訂正フィードバックといいます。
フィードバックの方法
- 明示的訂正(explicit correction):正しい言い方をはっきりと提示したいときに使用。
- リキャスト(recasts):会話を保ったまま、さりげなく訂正する(暗示的)。内容を重視した、コミュニケーションに重点を置いたレッスンの場合に使用。リキャストは教師が正解を言います。
- プロンプト(prompt)学習者に自己修正を促す。教師は正解を言いません。
「お店を買いに行きました」を例に挙げ、フィードバックの方法をそれぞれ見ていきましょう。
- 明示的訂正の例 T:「ちがいます。『お店に』が正しい言い方ですよ」
- リキャストの例 T:「そうですか、お店に買いに行ったんですね」
- プロンプトの例
① 反復 T:「ん?お店を買いに行きました?」S「あ、お店に買いに行きました」のように間違っている部分をそのまま繰り返し間違えに気づかせます。(暗示的)
② 誘導 T:「ん?お店・・・」S「あ、お店に買いに行きました」というように途中まで文を与えるなどして、学習者に正しい言い方を促します。(明示的)
実際のレッスンでは・・・
誤用は学習に必要な過程です。文法的正確さを問題にする場合は厳しく訂正することもありますが、コミュニケーションを重視する場合は、多少の文法的正確さは無視することはよくあります(逐一訂正されたら、モチベーションだだ下がりです・・・)。
訂正する場合は、コミュニケーションに関わる大きな誤り(言っていることがわからない)から小さな誤り(語彙・文法・発音の誤りはあるけれど意味は理解できる)までを段階的に分けて考えると良いと思います。
ただ実際、訂正の量もタイミングも見極めるのは難しいです。ロールプレイやディスカッションなどの活動では、逐一訂正するのではなくて、ある程度の発話したあとで「〇〇がよかったですね。今日直すところを3つだけ言いますね」と、フィードバックしています。(これは書きでも一緒です。真っ赤っかだったら萎えます・・・)フィードバックには肯定的なもの、否定的なものがあります。正しい、良かったと伝える肯定フィードバックは学習者のやる気を促したり、クラスの雰囲気をよくしたりするので、とっても大事にしています。
皆さんもレッスンデビューされたら、自分のクラスでぜひ色々試してみてくださいね。
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