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「〜なさそう」と「〜そうもない」は同じ?違う??
以前、校内の先生からあった文法の質問です。
A「今日雨降るのかな?」B「降らなさそうだよ。」A「じゃ、傘持っていかなくてもいっか。」
この会話、私には自然に感じられ、何も考えずに使っていました。でも、N3文法の例文で「(この様子だと)雨は降りそうもない」というのを見つけたとき、違和感が・・・。学習者に教える時は「〜なさそうだ」ではなくて「〜そうもない」ですべて教えるべきなのでしょうか?
面白い質問ですね。今日は、「〜なさそうだ」と「〜そうもない」について考えてみましょう!みなさんの語感では 「降らなさそう」と「降りそうもない」、この2文のイメージは同じですか?それとも、何か違和感を感じますか?
「〜そう(に)もない」
まずは、N3文法で出てくる「〜そう(に)もない」から見てみましょう。
<例文>
- 今日は定時で帰れそうもないな。
- やばい。待ち合わせに間に合いそうにないわ・・・。
- 人気の演目だから、チケット、取れそうにないね。
- 車両故障だって。こりゃ、しばらく動きそうもないね。
- (格闘技を見ていて)すごい筋肉。負けそうにないね。
「〜なさそう」
一方で、私たちは日常的に「〜なさそう」も使っています。こちらも全く違和感を感じませんね。
- 今日は定時で帰れなさそうだ。
- やばい。待ち合わせに間に合わなさそう。
- 人気の演目だから、チケット、取れなさそう。
- 車両故障だって。こりゃ、しばらく動かなそうだね。
- (格闘技を見ていて)すごい筋肉。負けなさそう。
「さ」入れは間違い!?
そもそも、この様態の「そうだ」ですが、動詞の否定のときに「さ」を入れるか入れないかで戸惑うことがあると言う議論もあります。『大辞林』によると、助動詞「ない」にはその語幹に「そうだ」がつく、とあります。つまり文法的には「〜な+そうだ」で、「降らなそうだ」「帰れなそうだ」「間に合わなそうだ」が正解というわけです。
形容詞の場合も見てみましょう。「今日は寒そうだ」の否定は「今日は寒くなさそうだ」、「面白そう」は「面白くなさそう」になりますね。ちなみに、「ある」の否定の「ない」は「問題なさそう」となります(「ない」は形容詞なので)。
おそらく、この形容詞の活用が動詞にも使われ、一般に広まったと考えるのが妥当ではないでしょうか。
「〜なさそうだ」と「〜そうもない」のニュアンスは全く同じ?
日本語教師用の『初級日本語文法と教え方のポイント』や『初級を教える人のための日本語ハンドブック』を見ると、二つの間には意味の違いはほとんどないと書かれています。
でも、全く同じとも言えないようで、「なさそう」は外観を見て直観で判断、「そうもない」は誰かが言ったこと、(世間一般に)言われていることへの打ち消し、という説明もあります。
つまり、「降らなさそう」の場合、空を見る限り雨雲もないし、しばらくの間は大丈夫そうだ自分で判断しているイメージです。一方、「降りそうもない」の場合、天気予報では雨だと言っていたけど、空を見ると雨雲はないという状態のときに言うイメージです。形容詞のイメージで動詞の場合も、見てそう思うとき、様態を表すときは「なさそう」が、しっくりくるのかもしれませんね。
「今度の試験、受からなさそう」と「今度の試験、受かりそうもないわ〜」はどうでしょう。「受からなさそう」は試験をした感触で受からないと判断、「受かりそうもない」は空欄がたくさんあったから受からないと判断したということでしょうか。
もう一つ、「この靴、疲れなさそう」は履いてみてそう感じており、問題なく「なさそう」が使えますが、「この靴、疲れそうもない」は違和感があります。CMなどで、この靴は軽くてクッションがすごいんです!などと宣伝していたら、「疲れそうもない」を使うかもしれませんが、どうでしょうか。若干無理矢理な感もありますが、全く同義とも思えないので、そういうことなのでしょう。
また、文作をしていて「なさそう」は話し言葉で例文を出したとき、終助詞を付けなくても自然なのですが、「そうにない」は終助詞がないと自然な話し言葉になりませんでした。これもニュアンスの違いの一つかもしれませんね。
うーん、今日は100%のこれだという結論に至りそうにないです。
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