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日本語らしい自然な発音で話すために
日本語らしい自然な発音とはどんなものでしょうか。聞いていて、「この人の話し方は疲れるな」、「何か気になって耳に入ってこないな」と思ったことありませんか?原因はなんでしょう。
実は、正しい発音でゆっくりはっきり話せば、自然な日本語に聞こえるというわけではありません。正確な発音よりも、スピードよりも、適切なフレーズで句切れているかのほうが重要だったりします。
発音指導には、これまで見てきたような個々の母音や子音など「単音」を扱うものと、アクセント、イントネーション、プロミネンス、ポーズ、テンポなどの「韻律(プロソディ)」を扱うものがあります。「韻律」が全体で「単音」が部分と考えると良いでしょう。
「一つ一つの音を正確に発音する」というのが発音指導のイメージかもしれませんね。でも、昨今では聞きやすいわかりやすい日本語は「韻律(プロソディ)」の影響が大きいと言われています。日本語には日本語独特のリズムがあるからです。(英語にも英語のリズムがありますよね。英語の音楽のグルーブ感を日本語で表現するのが難しいのはリズムの違いにも原因があります。)
体内に日本語のリズムを感じることができないままだと、いつまでたっても日本語らしい自然な発音にはなりません。全体の「韻律」も部分の「単音」もどちらも必要な要素ではありますが、まずは日本語のリズムに慣れることからはじめていくのもアリです。
韻律(プロソディ)の指導法
今回は韻律(プロソディ)の指導法について、日頃のレッスンで取り入れられるものをご紹介します。聞きやすく分かりやすい発音の指導として「句切り(ポーズ)」「への字型イントネーション」「アクセント」に焦点を置いた方法です。
図のように印をつけ視覚化することで、声の高さの動きを目で見て確認することができ、アクセントやイントネーションの特徴を意識しながら発話することができます。もっと簡単に済ませたければ、教師がへの字を空に書きながら、学習者にリピートさせるでも効果があります。
プロミネンス
プロミネンスとは文の中で強調したい部分や重要だと思う部分を際立たせることです。プロミネンスの方法には、「区切る」、「強く発音する」、「高低をつけて発音する」、「ゆっくり言う」などがあります。
プロミネンスで発話にメリハリがでます。プロミネンスは主に伝えなければならない重要な単語、キーワードを強調するときに使われますが、二つも三つも強調したい部分があると、結局何が一番伝えたい部分なのかが分からなくなってしまうので注意が必要です。
※句切りマーク(ポーズ):意味のまとまりで文を句切ります。息継ぎをするタイミングでポーズを入れてもいいでしょう。適切なポーズを取ることで、聞きやすい日本語になります。区切り方は話す速さによっても違います。速い人は長めに、遅い人は短めになることがあります。
への字イントネーション
句切りと句切りの間は「へ」の字のように最初に上がって、段々下がるイントネーションで発音します。モデル音声を使って「への字イントネーション」を見ながらリピートしたり、シャドーイングをしたりすると良いでしょう。「へ」の字を意識することで、不自然な上がり下がりがなくなり、滑らかな日本語らしい発話になります。
アクセント
アクセントの表示は単語単位で行われる傾向がありますが、それだけでは自然な発音にはなりません。意味のまとまりで区切った場合、単語一つで発音したときとアクセントのパターンが異なる場合があります。
*以前、シャドーイングの記事で紹介した初級のテキストにも「への字イントネーション」「ポーズ」「アクセント」マークが書かれているものがあります。このようなテキストなどをうまく使うことで、早い段階から「聞きやすい話し方」を指導することができます。
韻律読み上げチュータ スズキクン
朗読やスピーチの指導などをするときによく使用するのが、『韻律読み上げチュータ スズキクン』です。オンライン日本語アクセント辞書のOJAD『韻律読み上げチュータ スズキクン』には、入力したテキストを読み上げ、音声を作成する機能があります。
『スズキクン』を使えば、声の高さの動きを見て確認することができます。少し不自然に聞こえるところは、句読点を追加したりしてポーズの位置を調整すると、より自然になります。(これは教師の助けが必要なことも)
以前、私のクラス(上級クラス)であったエピソード。発音指導の成果発表ということで、学校イベントの校内放送をさせてもらう機会がありました。短い文章ではありましたが、自分でセリフを書き、『スズキクン』で印をつけ、何度も何度も自分の声を録音しては聞き直し、本番に挑みました。これほどまでに自分の発話に気を配ったことはないでしょうね。本番では一人放送が終わるたびに皆でハイタッチ、その緊張感、高揚感、達成感は忘れられないものになったと思います。今でも彼らの緊張した表情と終わった後の笑顔が忘れられません。素晴らしい思い出です。
日本語音声基礎 まとめ
「発音のせいでコミュニケーションがうまくいかない」という学習者(主に英語話者)の悩みにこたえるべく「聞きやすく分かりやすい発音で話せるようになる」とはどういうことかを見ていきました。
「伝わった」という喜びは格別なものです。今回例に挙げた校内放送はレアケースではありますが、やはり伝えたい相手がいると本気度がアップします。上手くなりたいのであれば、学習者自身が意識的にそういう機会を作って成功体験を積んでいかなければいけないのかもしれません。
私たち日本語教師にできることは、いつか訪れるその機会に備えて一緒に準備することです。グループレッスンならピア・グループで評価する機会を設けるといいですね。プライベートレッスンや自己学習でも自分の声を録音して聞くだけでも意識が変わるはずです。継続は力なりです。
みなさんも「日本語らしい自然な日本語」を意識した授業のアイデア、ぜひ考えてみてください!そして、この記事が日本語の音声、発音指導について考えるきっかけになれば幸いです。
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