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日本語の敬語って厄介!?
敬語とは、人と人がお互いを尊重し、お互いが気持ちの良いコミュニケーションをとるために使う表現方法の一つです。
敬語をはじめとした待遇表現は「相手に配慮する、気遣う」ということがより良い人間関係を築く上で日本では非常に重要視されています。ちなみに、待遇表現とは相手・場面・内容・状況などに考慮した表現のことを言います。
文化庁では2007年に『敬語の指針』を出しています。ご存知ですか。敬語の仕組みや使い方について細かく書かれていますので、ぜひ一度目を通してみてください。
日本語学習者も敬語は使えるようにならないといけないのか?
多様なスピーチスタイル
日本語初級では「です・ます」といった丁寧語から日本語の勉強を始めます。次に普通形を勉強します。丁寧語を用いた文のスタイルを丁寧体(polite style/ formal style /あらたまった言い方)、動詞の普通形を用いた文のスタイルを普通体(casual style/informal style/くだけた言い方)と言います。
以前ブログ記事でも触れましたが、普通体で会話する場合、名詞や副詞なども形が変わったり、男女によって終助詞の使い方にも変化が出てきたりします。これは文全体のバランスを整えるために必要なのですが、学習者にしたら大変なことですよね。
それに加え、初級の後半になると敬語が入ってきます。この段階では敬語の紹介程度ですが、学習が進んでいくと、丁寧さにおいても使い分けが要求されます。日本人は人間関係や場面でスピーチスタイルを選択し使い分けていますが、日本人でも敬語の使い方が上手くできない人はいます。これは非常に高度なテクニックを要します。敬語はネイティブの日本人でも使いこなすのが難しいのですから、外国人ならなおのことです。
敬語は使えなくても聞いて理解できれば問題なし!
「社会的な場面で求められる話し方を学びたい」という学習ニーズがある一方で、「敬語は難しくて、使い方がわかりません。」「敬語って話せないといけませんか?」「使わないのに、どうして勉強しなければならないの?」という学習者も当然出てきます。
敬語は自ら使用はできなくても理解できる程度に勉強しておくことをお勧めしています。
ただ、学習者に知っておいてほしいのは、日本人は「外国人と話す場合には、敬語を使わずに話そう」などという配慮まではしないということ。逆に、丁寧な日本語で、と容赦なく敬語を使って話しかけてくることがあります。これが外国人にとっては理解の妨げになっているとも多くの日本人はわかっていません。外国人と多く接する機会のあるホテルやレストラン、デパートなどの店員は敬語を使います。これが日本の礼儀でマナーだからです。
一般的に多くの日本人は外国人の敬語の不使用には寛容です。ですから、敬語は自ら使えなくても問題ありません。むしろ、ビジネスの場面においては「です・ます体」を用い、スピーチスタイルをしっかり維持して話すほうが好印象です。もし敬語をビジネスの場面で使ってみたいという方は、打ち合わせ前後の挨拶からチャレンジしてみるといいかもしれませんね。
敬語の分類
尊敬語
丁寧形(④) | ① 特別な形
(基本動詞:約15) |
② お・ご〜になる
*「○ます」の「○」が1音節の場合は❌ |
③ (ら)れる
*「わかる」「できる」はない。 |
食べます | 召し上がる | お食べになる | 食べられる |
待ちます | ― | お待ちになる | 待たれる |
来ます | いらっしゃる | ― | 来られる |
尊敬語:Honorific Expressions
尊敬語の仕組み
尊敬語は相手(聞き手)を高める時に使います。ポイントは「相手の行動」に対して使用するという点です。
はじめて会うクライアントの人と話すということであれば、①を使うのがベストですが、①の特別な形は数が限られています(15動詞くらい)。したがって、①がない場合は②を使い、②がない場合は③を使うと伝えます。そうすることで、学習者は体系的に尊敬語の仕組みを理解することができます。中上級〜上級レベルのタイミングで一度体系的にまとめてあげると、ストンと腑に落ちることがあるようです。
さらに、日常的によく使う形として、②の応用編で以下のようなものもあります。
- 読んでいます → お読みです
- 読んでいる本 → お読みの本
- 読んでください→ お読みください
*①の特別な形は”丸暗記”です。レッスンのはじめにウォームアップで5分、敬語タイムを作って話したりするのも良いでしょう。使わないと忘れてしまうので、今週は”敬語ウィーク”のような感じで時間を設けて練習するしか方法はありません・・・
尊敬の度合い(敬度)
①②>③>④と伝えます。先程のように「はじめて会うクライアント先の人と話す」という場面では①②を使うのがベストです。ただ、少しずつ相手との距離が縮まっていった場合、①②→③→④となり、友達や恋人、はたまた家族と関係が変化していった場合、普通体(casual style/informal style/くだけた言い方)とスピーチスタイルが変化します。反対もありますね。恋人や夫婦が別れたら、普通体から④→③→①②と意識的に距離をとる場合もあります。
外国人から見るとスピーチスタイルで相手との距離感がわかるというのは大変興味深い現象のようです。日本人のコミュニケーションの方法である敬語を「文化」として紹介すると、興味を持ってくれるかもしれませんし、その大切さも理解してくれるかもしれません。
謙譲語
丁寧語 |
謙譲語Ⅰ①特別な形 (基本動詞:約15) |
謙譲語Ⅰ②お・ご〜する/いたす(*注1) |
謙譲語Ⅱ/丁重語
|
食べます | いただく | ― | いただく |
持ちます | ― | お持ちする | ― |
来ます | まいる/うかがう | ― | まいる |
謙譲語の仕組み
▶︎謙譲語Ⅰ:Humble Expressions
謙譲語Ⅰは、
自分(話し手)を低くすることで、相手(聞き手)を高めるときに使います。ポイントは「自分の行動」に対して使用するという点です。
<例>
上司「これ、ちょっと持ってもらえる?」私「はい、お持ちします」
私「先生のところに伺いたいのですが、ご都合をお聞かせ願えますでしょうか」
謙譲語は①の特別な形がない場合は②を使います。また、『「人に」お知らせする、お見せする、ご案内する』のように、動作の受け手を持つ場合に使うのが特徴です。
*注1:主語の範囲にとどまる行為には使われない。 <例>❌ 私は来月、ご結婚します。
(その他、NG動詞:食べる、座る、結婚する、びっくりする)
▶︎謙譲語Ⅱ(丁重語): Extra-modest Expressions
謙譲語Ⅱは高める相手(動作の受け手)はいませんが、話し手の丁寧さを表したい時に使用します。Extra-modestの日本語訳は「超控えめ」、よく自己紹介などで使うのが謙譲語Ⅱ(丁重語)です。電車のアナウンス、デパートなどのインフォメーションデスクなどでもよく聞きます。
<例1>駅で:3番線に渋谷行きの電車がまいります。黄色い点字ブロックまでお下がりください。
<例2>デパートで:私「すみません、トイレはどこですか」受付「お手洗いはあちらでございます」
<例3>この度、入社いたしました田中と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
<例4>①コピーを取らせていただけますか。②それでは発表させていただきます。
※「(さ)せていただく」は①だれかの許可をもらって行うとき ②その場にいる人や関係者にあらたまりの態度を示すときに使用されますが、使いすぎると違和感や不快感を与えることがあるので注意が必要です!
文体を統一するために必要な表現
動詞以外もあらたまった表現を使うことにより、文体が統一され、品位を保持することができます。語感は性別、年齢、地域などによって個人差がありますし、使いすぎにより抵抗感や不快感を感じさせてしまう場合もあるので、バランスが重要です。
美化語を使用する
美化語:「お」・「ご」がつく名詞・い形容詞・な形容詞
原則は
「お」・・・和語には「お」 例:お知らせ、お住まい、お忙しい、お好き
「ご」・・・漢語には「ご」 例:ご連絡、ご住所、ご立派、ご機嫌
* 例外あり:お時間、お上手、お食事、お電話、ごゆっくり
* カタカナ&公共物には「お」・「ご」はつかない。
*「お」の有無で意味が異なるものもある。(例:にぎり、開き、荷物、寒い)
*「お」「ご」をつけないと、乱暴に聞こえるものもある。(例:茶、菓子、酒、金、寿司、風呂、客)
*「お」「ご」をつけすぎると、女性っぽく聞こえる場合がある。
あらたまった表現を使用する
<例>
今日⇨本日 昨日⇨昨日 ここ⇨こちら
後で⇨後ほど もうすぐ⇨まもなく とても⇨非常に/大変 ぐらい⇨ほど
わたし⇨わたくし 人⇨方(尊敬語)、者(謙譲語)
おすすめのテキスト(敬語の学習)
レッスンで敬語を教えたい、また敬語について理解を深めたいという方、こちらの2冊がおすすめです。
上級『日本語文法演習』敬語を中心とした対人関係の表現ー待遇表現ー (スリーエーネットワーク 2003)
中級『初級が終わったら始めよう 新・にほんご敬語トレーニング』(アスク出版 2014)
update 10/29/2021
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