導入って奥深い〜! 導入で失敗するパターン8選

導入って奥深い〜! 導入で失敗するパターン8選

導入でタジタジに…

以前、導入をサボるとどうなるんだろう?という素朴な疑問から、導入時の注意点を考えてみる記事(「導入」をサボるとどうなるのか?「〜ましょうか」「〜ませんか」を例に)を書きました。

こんな記事を書いておきながらなんですが、先日導入でズッコケてしまいましたので、お恥ずかしながらシェアさせていただきます。

その日の文型は「のに」。私はこのような例文を出してみました。「大学生なのに、簡単な漢字が読めません」。そして、「のに」のニュアンスをわかってもらうために、「変ですね。恥ずかしいですね。」と補足しました。

それを聞いた学生から「大学生でも読めない漢字がありますよね」「漢字が読めないことは恥ずかしいことなんですか」といった疑問の声が。私は「えーと…、これは一般論というか…」とタジタジ。

さて、導入は学生がその文型に着目するための例文選びが重要になります。ですので、私のように、学生に文型以外の部分を気にさせてしまうのはよろしくありません。

導入の例文で気をつけた方がよいことは何でしょうか?基本中の基本のテーマではありますが、意外と奥深い導入時の例文について考えていきたいと思います。

導入で上手くいかないパターン

文型「のに」を例に、導入で上手くいかないパターンを挙げてみます。

① 内容が納得しにくい

例:「大学生なのに、漢字が読めないのは恥ずかしいです」

早速ですが、私の例から。学習者が「え、大学生でも読めない漢字あるよ」「恥ずかしいの?」と内容に疑問を持つパターンです。内容面に引っかかるせいで、文型に集中できません。一般論が学生の価値観とずれていたり、教師の文化観や価値観が例文に出ている場合に起きやすいようです。

② 文型の意味と例文の「感情・ニュアンス」が合っていない

例:「彼は医者なのに、料理が上手です」

「のに」は逆接で意外性・不満・驚きなどを表しますが、例文がポジティブで意外性が薄いケースです。学生は「医者が料理が上手くて何が悪い?」「けっこう普通のことなのでは?」と思い、文型の核心(逆接・ギャップ)が伝わりません。

③ 文型以外の語彙・背景知識が難しすぎる

例:「政府の対応なのに、透明性が欠けている」

「政府」「透明性」などが難しく、文型どころではありません。語彙説明に時間を取られ、文型習得の効率が落ちてしまいます。既習の語彙のみ使うのがよいでしょう。

④ 学習者本人の価値観に強く触れる/センシティブな内容

例:「40歳なのに、結婚していません」

国籍・文化・個人の価値観によって不快になるケースです。感情的に反応され、文型より倫理的な議論になりかねません。

⑤ 学習者の現実と合わなくてピンとこない

例:「雪が降るところに住んでいるのに、スキーが苦手です」

これはどちらかというと、雪を見たことがない学習者か、少なくとも雪国出身者以外向けの例文だと感じます。

私は冬の体育の授業がスキー遠足だったという地域に住んでいますが、雪国でもスキーができない人はたくさんいます。というか、たぶんできない人の方が多いです。

「のに」には「意外性」や「ギャップ」のニュアンスが含まれていますので、雪国の事情に詳しい人には、「雪国なのに、スキーが苦手です」→「いや、苦手な人たくさんいるし!」となり、現実とのズレが気になってしまいます。

⑥ 文型の典型パターンではない構造を使ってしまう

例:「忙しいのに、時間があるように見える」

構造が複雑すぎるパターンです。「忙しいのに、時間があるように見える」は、副詞節や複雑な主観表現が重なって、文型の基本パターンがぼけています。「のに」の核心=逆接の関係が見えにくくなっています。

⑦ その文型を使う必然性が薄い

例:「今日は雨が降っているのに、気温は高いです」

「のに」より「が/けど」を使ったほうが自然です。「のに」は 話し手の強い意外感・落差・不満 を含む逆接です。一方「が/けど」は 中立的な逆接・単なる対比を表し、感情が強くない場合はこちらの方が自然です。

この例文は、あえて「のに」を使う必然性が薄いため、学習者が文型の使いどころをつかめない恐れがあります。

⑧ 「非現実的すぎる」例文でリアリティがない

例:「犬なのに、空を飛べます」

ファンタジーかよ!(笑) ギャップはありますが、ふざけすぎて文型の練習としては不適切ですね。文型理解よりジョークとして消費されてしまいます。

とはいえ、できればオリジナル導入文を提示したい

ということで、「のに」を例に、導入時の上手くいかないパターンを考えてきました。

テキストにも導入文はあるので、それをそのまま使ってもいいとは思います。でも、できるだけ学習者個人の状況や好みに合った導入文を用意できた方が、学生の「食いつき」は良くなると思いますし、私たち教師もやりがいを感じやすくなります。

その一方で、オリジナル文ゆえのリスクが潜んでいます。導入はその名の通り、授業の最初の方にあるので、ここでコケると焦りますよね…。上記の8点に気をつけていただくと、「授業の最初にコケる率」は下がるのではないかと思います。

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