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「〜てよかった」に盲点あり!?
さてさて、今回の質問は初級文型「〜てよかったです」です。学習者が下記のような作った文を作ったそうです。
AとBの明確なニュアンスの違いをうまく伝えられず少しモヤッとしたそうです。たしかに、どちらも問題ないですが、ニュアンスは違いますね〜。
みなさんはどう感じますか?どう説明しますか??
引っ越してよかった vs 引っ越せてよかった
A. 自分に乾杯
「日本に引っ越してよかった」
→ 自分の意志で引っ越して、今楽しい生活を送り、満足している。Aは自らの意志を持ってしたことがいい結果につながったので、自分に乾杯🥂
B. 自分をとりまくあらゆる状況や人に乾杯
「日本に引っ越せてよかった」
→ コロナで入国できないかもと思ったけど、規制が緩和されて入国できた。ようやく引っ越せた〜という事実そのものを良かったと思っている。
Bは外部的要因や障害がなくなったおかげでできたというケース。Bは可能動詞=無意志動詞なので、自分の意志ではコントロールできないのです。自分をとりまくあらゆる状況や人に乾杯🥂
「〜てよかった」に盲点あり!?
学習者に言われて、はたと気がつくことってありますよね。テキストだけ見ていると意外と気づかない、まさに盲点。
「て形」と言われたら、私たち日本語教師も「はい、はい。て形ね」って感じですよね。でも、「て形+よかった」の「て形」はあくまでも接続の方法、形の話。いろんな動詞を入れて自由に文が作れるんですよね。
例えば、「あなたに会えてよかった♪ byキョンキョン」で可能はもちろん、「早めに病院に行かせてよかった」で使役も、「就労が認められてよかった」で受身も文ができちゃいますね。「晴れてよかった」で自動詞もオッケー。「あきらめなくてよかった」「予約しておいてよかった」「誰かいてよかった」などなど。
どんどん出てきたぞ〜エンジンがあったまってきた。笑
この文型はN4レベルです。初級の学習者ならきっとAのパターンで文作するでしょう。先生もキューの出し方を学習者のレベルに合わせてコントロールしていますから、Aのパターンで作るでしょう。だから、スルーしがち。
「色々あって大変だったけど、いやあ、良かったよ」という場面で、Bのパターンで文が言えたら、あっぱれです!でも、練習が必要ですね。Aがしっかり定着したら、「予約しておきましたから、並ばないですぐ座れました」→「予約しておいてよかった」などと練習できるといいですね。
まあ、なんでもOKというのは便利なようで、これってほかの文型との合わせ技なわけで、だいぶハードルが上がるんですよね。でも、段階的に少しずつ難易度を上げていけば大丈夫👍 ここは日本語教師の腕の見せ所なのかもしれません💪
日本語を科学する
Cotoのコミュニティーには、講師の疑問&質問等をみんなで「あ〜でもない、こ〜でもない」と考えるslackのチャンネルがあります。本日はそこであった講師同士の質疑のやりとりをシェアしました。
なにか気がついたときに、メモしておくってとても大切なことです。あっという間に忘れちゃいますからね。私たちは日頃レッスンをしていると、学習者からいろんなことを気づかされます。そこでネイティブの日本人には到底考えられないような疑問や間違いに出会うことがあります。これって、実は宝の山。どうしてそんな質問が出るのか、そんな間違いが生じるのか深掘りしていくと日本語の本質に迫れます。
この工程は生命工学の世界に似ているそうです。「正常な人間の脳をいくら研究しても脳の機能はわからない。機能不全の患者さんを調べることにより正常機能がわかる」と、いつもコトハジメを読んでくれる科学者の友人が言っていました。
私たちは日々、日本語を科学しているんですね。この日本語を科学する力=自分で考える力を身につけることが、日本語教師力をUPする上で、遠回りのようで一番の近道だったりします。こうした積み重ねで私たち日本語教師はどんどん進化することができます。だから、どんな小さな疑問・質問でもシェアしてくださる先生方にはいつも感謝。そこで足を止めて、例文をあげてくれたり、その質問に向き合ってくれる先生方にも感謝です。これからも一緒に日本語を科学していきましょう!
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