中級文法コラム24 似ている言葉②  せっかく vs わざわざ

中級文法コラム24 似ている言葉②  せっかく vs わざわざ

 

A:いや~ やっぱりローマは見どころが多いですね。
B:そうですね。わざわざローマまで来たんだから、世界遺産、見られるだけ見たいですね!
A:あ、え? ええ… 世界遺産もいいんですけど、せっかくローマに来たんですから、おいしいイタリア料理でも食べに行きませんか?
B:イタリア料理なんか日本でも食べられるじゃないですか。ローマの世界遺産はローマにしかないんですよ!
A:それはそうですけど、実は、私には何かもう、全部同じに見えてしまって…
B:そうなんですか… じゃあ、明日は別行動にしましょうか。私は世界遺産巡りに行ってきますから、Aさんは何かおいしものを食べに行ったりしますか?
A:いいですか? じゃあ、そうしましょう! せっかくだから、オペラも見たいなって思ってたんです。
B:じゃ、明日は別行動で!今日は最後にカラカラ浴場だけ一緒に見に行きませんか?
A:カ、カラカラ…? わかりました、行きましょう。

皆さんは、旅行のときはAさんタイプですか? Bさんタイプですか? 今回は、「せっかく」と「わざわざ」の違いを比べてみたいと思います。

  • せっかくローマに来たんだから、おいしいイタリア料理が食べたい。
  • わざわざローマに来たんだから、おいしいイタリア料理が食べたい。

これは、どちらも意味が通っていますね。どちらも「何かを行なうこと」を表します。

ただ、「せっかく」より「わざわざ」の方が、イタリア料理を目的にローマまで来ている感じがします。ちょうどローマに来ているから、おいしいイタリア料理が食べたい、というのが「せっかく」。イタリア料理を食べるために、遠路はるばるローマまでやって来たんだ、というのが「わざわざ」でしょうか。

そう考えると、

  • せかっく…ちょうどいい機会だから~
  • わざわざ…目的のために頑張って~

という意味がありそうです。

せっかく vs わざわざを例文で検証してみよう

例文1

  • せっかく作ったから、全部食べていってね。
  • わざわざ作ったから、全部食べていってね。

「せっかく」の場合、心の中は「一生懸命作った」というのもあるけど、それより「いっぱいあるよ~。好きなの食べてね~。残したらもったいないから全部食べてね~!」という思いが強いような気がします。一方の「わざわざ」には「みんな来るっていうから、頑張って朝5時に起きて作ったんだよ。残したら許さないからね!」という気持ちがあります。

 

例文2

  • せっかく誘っていただいたのに、行けなくてすみません。
  • わざわざ誘っていただいたのに、行けなくてすみません。

「行きたかったけど、予定があって行けない。いい機会だったのに活かせなくて残念」という気持ちのとき「せっかく~のに」が使えそうです。相手が私のためにいろいろ調べたり、段取りを整えての誘いに対して、相手の努力を無駄にしてしまうときは「わざわざ」を使うような気がします。

 

例文3

  • せっかくの休みだから、のんびり休もう。
  • わざわざの休みだから、のんびり休もう。(?)

今日の休みはいい機会だからゆっくり休もうという意味で、「せっかくの」を使っています。「わざわざの」は非文です。じゃ、「わざわざ」を使いたかったら、どんな文にすればいいでしょうか。「わざわざ休みを取ったんだから」「わざわざ取った休みなんだから」とかですかね。

でも、「わざわざ休みを取ったんだから」だと、なんだか印象が悪いですね(というか、若干こわい!?)。なんでしょう、このこわさ・・・。「わざわざ休みを取ったんだから」「雨の中わざわざ来たのに」「わざわざお金を払ってまで」などのように自分の行為に対して使うと、「しなくてもいいんだけど、頑張ってしてやった感」が全面に出ます。

また、チラシを見て某有名回転ずしチェーン店に行ったのに、「そのキャンペーンは来週からです」と言われたら、「わざわざ来たのに」と言いたくなります。自分の行為が無駄足だったという苛立ちを表現したいのであれば「わざわざ」ですね。もちろん「せっかく来たのに」も言えますが、こちらは機会が失われたほうに気持ちが向いているんじゃないでしょうか。「せっかく」のほうがソフトに聞こえるのはそのためですね。

 

「せっかく vs わざわざ」のまとめ

「せっかく」も「わざわざ」も「何かを行なうこと」を表します。

せっかくは「ちょうどいい機会だからついでに・・・」、わざわざは「他のことのついでではなくその目的のためだけに・・・」と覚えておくと、迷わないかもしれませんね。

ただ、わざわざは注意が必要です。「わざわざありがとう」でも、場面によってはプラスのイメージに働く場合と、マイナスのイメージを与えてしまう場合があるからです。相手に不愉快な印象を与えてしまいかねませんので、お気をつけください。

というわけで、せっかくですから、他にも例文作ってみて検証してみてください。ご自身なりの解釈が見つかるかもしれません。

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