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中級文法コラム20 「つつ」と「一方」の使い分け
山田さんは会社で働きつつ、資格を取るために学校に通っている。
山田さんは会社で働く一方、資格を取るために学校に通っている。
どちらも二つの行為をしているという意味がありそうですが…。今回は「つつ」と「一方」を取り上げます。
同時進行の「つつ」vs「一方」
つつ
<例文>
- 山田さんは会社で働きつつ、資格を取るために学校に通っている。
- 電話で話しつつ、メモを取る。
- 酒を飲みつつ、語り合う。
- 買い物に行きつつ、お茶でもどう?
「会社に通うという行為と同時に、学校にも通っている」ということで、「AをしながらBをする」「これもやるけど、同時進行であれもやる」という意味になります。
じゃ、「ながら」と「つつ」の違いは何でしょう。どちらかというと、「ながら」は口語的、現代的な言い回しで、「つつ」は文語的な言い回しで、文章などの書き言葉で多く用いられます。
前件がメインの行為、後件がサブの行為といった印象があります。でも、次の例文はどうでしょう。
- こちらの計画も進めつつ、新しい企画に力を注いでいきましょう。
- 夏休みのホテル、Aホテルを予約しつつ、もっと希望の条件に近いホテルを探している。
同時行動ではあるけれど、前件は念のためでバックアップ。とりあえず予約できるホテルをとっておいて、もっといいホテルを探そう。仮にいいホテルがとれなくても、Aホテルを予約してあるから大丈夫といったニュアンス。
なるほど。先ほど「前件がメインの行為、後件がサブの行為」と書いたけれど、「念のため」の使い方だとむしろ後件がメインの印象がありますね。いやぁ、難しい。
一方
<例文>
- 山田さんは会社で働く一方、資格を取るために学校に通っている。
- 彼女は世界的に有名な歌手である一方、家では5人の母親でもある。
こちらも、「AをしながらBをする」で同時進行の時に使います。同時進行ではありますが、「会社で働くという行為」と「学校に行為」はまったくの別物。ここでは対立する行為にフォーカスしています。
対立している場合の「一方」vs 「つつ」
一方
「一方」は次の例文のように「Aだ。反対に、他の面ではBだ。」という対比の意味で使う場合があります。
<例文>
- アニメで日本語を勉強するという学生がいる一方、アニメは勉強の役に立たないという学生がいます。
- 部長は機嫌がいいときは部下に対してやさしくなる一方、機嫌が悪いと怒鳴り散らす。
- コーチは選手を厳しく管理する一方、選手が自主性を持って行動することを期待している。
つつ
あ、でも、「つつ」でも対立を表せるんじゃない??
<例文>
- やばいと知りつつ、「簡単に稼げる仕事」に応募してしまった。
- 禁煙しようと決心しつつ、「最後の1本」が何本も続いてしまう。
- 勉強しなきゃと思いつつ、遊んでしまった。
「やばい」と思っているのに、対立する行為「応募」をしてしまう。「禁煙」を決心しているのに、対立する行為「最後の一本」を吸ってしまう。
確かに対立はしているけど、こちらは心の葛藤です。「わかっちゃいるけど、やめられない」といった心境でしょうか・・・。ここで対立しているのは話し手の「心理」と「行動」です。これは「ながら(も)」「けれど(も)」に置き換えて使うこともできます。
これを「一方」に置き換えてみると、どうなるんでしょうか?やってみましょう。
✖️やばいと知る一方、「簡単に稼げる仕事」に応募してしまった。
非文です。この場面、「つつ」と「一方」は入れ替えられません。ちょっと文末を変えてみます。
- やばいと思う一方、「簡単に稼げる仕事」に応募したいとも思う。
おや?ちょっとニュアンスが変わってきましたね。ここで対立しているのは2つの思い。つまり、対立は対立でも、対立しているものが異なるということです。
「つつ」と「一方」は同じですか?「つつ」と「ながら」は何が違うんですか??学生からこんな質問がでたときのために、自分でいろんな例文をあげつつ、ちょっと悩んでおくといいかもしれませんね〜。
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