英語話者に多い「行く」と「来る」の言い間違え
母「晩ごはん、できたよー」
娘「はーい、今行く(例1)」
この「今行く」、英語なら”I’m coming!” になります。 “I’m going.” とは決して言いません。もし “I’m going.” なんて言ったら「え、これから出かけるの?」と言って、片づけられてしまうかもしれません。このように、英語では “come” を使うケースであっても、日本語では「行く」を使うことがあります。皆さんも英語を勉強していたとき、こんな言い間違い、ありませんでしたか。
さてさて、日本語のレッスンでもこれと同じようなことがおこります。
たとえば、オンライン・レッスンでアメリカに住んでいる学習者が「まだビザが出ません。早く日本に来たいです(例2)」とか、レッスンのあと教室で「先生、木曜日から出張があるので、来週のレッスンに行けません(例3)」とか。言いたいことはわかるけど、あ〜違うんだよな、おしい!と思うことがあります。こんなとき、みなさんはどのように学習者の言い間違いを訂正しますか?
今日は英語話者に多い間違えの一つ、「行く」と「来る」について考えてみます。
日本語における「行く」と「来る」
ふたりが同じ場所にいるとき
日本語初級のはじめに出てくる動詞「行く」と「来る」の基本的な考え方はこちら。
行く | 今いる場所から別の場所に向かう(=遠ざかる) |
来る | 別の場所から今いる場所に向かってくる(=近づく) |
「行く」と「来る」は日本語であろうが英語であろうが、話し手とその相手が同じ場所で話している限り何の問題もありません。
ふたりが別の場所にいるとき
問題は、話し手とその相手が別の場所にいるときです。
<例1のケース>
母「晩ごはん、できたよー」娘「はーい、今行く」
母はキッチンにいて、娘は自分の部屋にでもいるのでしょう。ふたりは別の場所にいます。日本語だと娘(私)は今いる場所(自分の部屋)から別の場所(食卓)に向かうので「行く」を使います。
<例2のケース>
学生と私は別の場所にいるときは、学生は今いる場所(アメリカ)から別の場所(日本)に向かうので「日本に行きたいです」が正解です。
<例3のケース>
学生と私は同じ場所で話しています。学生は出張先から学校(ここ:2人が今いる場所)に向かえません。ですから、「先生、来週の木曜日から出張があるので、レッスンに来られません」となります。
「今オフィスにいて、メールでレッスンをキャンセルをするときは?」「歯医者の受付にいて、次回の予約をするときは?」などと質問してみると理解したかどうか確認できます。このようなやりとりは学習者のリアルライフで頻繁にあることなので、正しく言えるようになってほしいですね。
まとめ
- 「行く=go」「来る=come」と教えるのはキケン!!!
- 「行く」「来る」のポイントは「今いる場所から遠ざかるか、今いる場所に近づくか」
こういう間違いがよくあるということを私たちも認識し、準備しておきたいですね。初級の最初の「行く」「来る」のレッスンのとき、QA練習のタイミングでまずはイラストなどを使ってサクッと紹介するといいかもしれません。でも、ここで紹介しなくてもかまいません。間違ったときにクラスでシェアするのも良いと思います。間違ったときのほうがより自分事として捉えられますからね。
また、「持っていく」と「持ってくる」、「連れていく」と「連れてくる」(英語の “bring” と “take” )でも同じようなことが起こりえますので、どこか頭の片隅に置いておいてもらえると良いかなと思います。
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