日本について外国人に聞かれたら?ー日本語は世界一難しい言語か? (後編)ー

日本について外国人に聞かれたら?ー日本語は世界一難しい言語か?(後編)

今回は日本語は世界一難しい言語か?の後半です。
前半では日本語の発音や文法についてお伝えしました。(日本語は世界一難しい言語かー前半

後半となる今回は、会話や語彙の日本語の難易度についてお話していきたいと思います。

会話・語彙

日本語の語彙は・・・初級:簡単 → 中級以上:とても難しい!

初級日常会話までは使われる語彙数も多くなく、比較的簡単です。

日常会話ではその他のハイコンテキスト文化を持つ言語と同様、言語だけで言い分けるのでなく、一つの言葉に様々な意味や気持ちをのせて表現しニュアンスや文脈などで理解しあう傾向があります。

しかし一度日常会話のレベルを超えて中級以上になると、抽象的な概念を持つ語彙や漢語の熟語などが増え、対象語と動詞の結びつきが決まっているもの(コロケーション)などもあり、難易度がぐぐっと上がります。

 

日本語はハイコンテクストである  ・・・全てを言語化しない

また会話においては中級以降で、より洗練された話し方をしようとすればするほど、最後まで伝えきらずに、文を途中でとめて言葉を濁したり、また話しているうちに主語がどんどん変えたりして、文脈依存の話し方が始まります。

「空気を読む」「行間を読む」「あうんの呼吸」など わざわざ言わなくても伝わるというコミュニケーション・スタイルは日本ならではのものです。

これらはハイコンテクスト文化のコミュニケーションの特徴で、そのような背景を持つ言語ではコミュニケーションを非言語の部分(文脈や背景、アイコンタクトや表情)に頼る傾向があります。すなわち、言葉で全てを表現しない文化であるということです。

 

高文脈(ハイコンテクスト)文化 No. 低文脈(ローコンテクスト)文化
言葉以外に状況や文脈も情報を伝達する
重要な情報でも言葉に表現されないことがある
1 伝達される情報は言葉の中で全て提示される
曖昧な言語
非言語コミュニケーションの役割も大きい)
2 正確性が必要とされる言語
一般的な共通認識に基づく 3 言葉に基づく
双方の合意に基づいた契約でも
状況によって柔軟に変更される
4 双方の合意に基づき契約され
変更は容易ではない
感情的に意思決定される 5 論理的に意思決定される
沈黙は不快ではない 6 沈黙はコミュニケーションの途絶として不快
身体や経験で技術継承する 7 明示できる知識として継承する

Wikipedia 高文脈・低文脈文化 引用

 

ローコンテクスト文化(英語やヨーロッパ言語に代表される)の人たちから見ると、日本人は何を考えているかわからないという部分にもつながるのではないかと思います。(日本人同士は土台となる文化を共有しているため、察することができるのですが・・・)日本語の主語の省略についても同じようなことが言えるかもしれませんね。

引用:https://www.tecnolyticscorp.com/single-post/2017/06/30/Plans-and-budgets-must-be-in-Low-context-of-communication

 

日本語は待遇表現を多用する

このわかりにくさに追い討ちをかけるのが待遇表現の多用です。

礼節を重んじる日本の中では気遣いや敬意をとても細やかに言語化します。よく待遇表現といってパッと思いつくのは、敬語などの敬意表現です。これは聞き手を高く待遇するのでプラスの待遇表現といわれます。

 

一時期大きな話題となりましたが、”シンガポールのEmailと日本のEmailを比べる”というものがありました。

「売上のデータをアップデートしてください」という内容をシンガポールで書くと右のように数行で済むのに、日本人が書くと左のように数段落になってしまうということを面白おかしく表現しています。

丁寧さをしっかり言語化するのが習慣になっているため、英語になって丁寧に=長く表現してしまうという例と言えるでしょう。

 

引用:  http://evacomics.blogspot.com/2012/06/japanese-style-email.html

会話でも同じことがいえるのではないでしょうか。
ハイコンテキストでの文の省略をおこない、一方で待遇表現で言葉をどんどん足していく。これは第2言語で日本語を話す人にとっては非常に難解であると言えます。

 

 

日本語を海外の方と共通語として使うときに気を付けること

日本人が海外の方との日本語でのコミュニケーションで気を付けることは二つあります。
(もちろん通常の日本語では聞き取りが難しい場合に)

・省略をせずにいいたいことを文の形でしっかりと最後まで伝えること

・丁寧さや気遣いのことば削ぎ落として、わかりやすい文で最後まで文を言い切ること。

このように日本人側が話しかたをシンプルにすることで理解の負担を減らすことができます。これが今話題になっている「やさしい日本語」のコンセプトの一つです。

仕事などの場では日本人側が発話コントロールの意識を持つことが日本語を第2言語とする人とのコミュニケーションには必須になのではないかと思います。

ただ、これは文化の一つ。ネイティブ同士が会話する際はコントロールが難しいです。日本人の中に1人ノンネイティブがはいるというような環境がやはりノンネイティブによっては一番タフであり、同時に身をもって話し方に慣れるチャンスであるともいえます。でも、それがどれだけタフなことかを知っておくだけでも、フォローがしやすくなるでしょう。

 

まとめ

日本語を世界一難しいとう要素は下記の2点ではないかなと思いました。

・表記システムの複雑さ

・待遇表現・慮り・察しあいの入り混じったハイコンテキストなネイティブ同士の複雑な会話

いずれにしても、母語と違いが大きい言語のシステムを習得していくというのは大変なことです。
上記のようなポイントは日本語を教える中で必ず学習者の皆さんがつまずく部分でもありますので、日本語の特徴してしっかりと抑えておきましょう。

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