同じ漢字でも意味が違う?中国語話者の誤用や質問の実例から見る漢字語彙の意味の違い

同じ漢字でも意味が違う?中国語話者の誤用や質問の実例から見る漢字語彙の意味の違い

意外とある?日本語と中国語、それぞれで使われる漢字や語彙の意味の違い

Cotoはもともと欧米出身の学生さんが多い日本語学校なのですが、ここ最近は東アジア出身の学生さんも多くなってきたと聞きます。私はオンラインコースに所属していますが、言われてみれば、中国語圏や韓国の方の名前だろうなと思うお名前を見る機会が増えていると思います。

漢字の生みの親・中国語はもちろんのこと、韓国語にも漢語由来の言葉があり、これらの言語の中に、日本語と同じ単語や似ている発音の言葉を発見することもしばしばです。漢字文化を共有していることは、日本語学習において圧倒的なアドバンテージとなる一方で、同じ・似ているからこそ、かえって混乱することもあります。

今回は中国語話者に焦点を当てて、実際にあった誤用や質問の例をご紹介します。

 

「味」と「匂い」

ある日中国語話者の友人と一緒に街を歩いていて、レストランの前に差しかかった時、その友人が「おいしそうな味がするね!」と言ったのです。

日本語話者からすると「味」と「匂い」は全く違う2つの単語に思えると思うのですが、中国語では同じ単語を使えるんです!中国語では、「味」も「匂い」も「味道」という単語で表すことができます。(中国語ネイティブに聞いたところによると、もし使い分けたければ、「口味」(味)、「(气)味」(空気中に漂う匂い)と言うらしいので、「味」と「匂い」を同じものだと思っているわけではなく、「味道」がどちらにも使えるニュートラルな単語という認識らしいです。)

私も中国語を勉強し始めた頃にこの単語を知り、「味と匂いを同じ単語で表現できる言語があるんだ!」と驚いたことを今も覚えています。

 

「分かる」と「知る」

今回の記事を書くにあたり、中国語のネイティブの友人とビデオ通話で日本語と中国語の漢字語彙の違いについて話したのですが、その時話題に上がったのは、中国語話者には「分かる」と「知る」の違いが分かりにくいということでした。

中国語で「分かる」と「知る」はどちらも「知道」という単語で表されます。そのため中国語話者にはその使い分けが分かりにくく、その中国語ネイティブの友人は、自身が日本語を勉強し始めた時、当時の日本語の先生から「『知らない』よりも『分からない』と言った方がよい。『知らない』は無関心という意味合いが強いから」とアドバイスされたそうです。

中国語を勉強した日本語話者としては、「知道」という単語を分かりにくいと思ったことはなかったので、友人のこのエピソードは思いがけないものでした。

いとこ

漢字は表意文字なので、家族関係の単語であれば違いはほとんどないように思えます。ですが、意外と違う単語もちょこちょこあるんですね。私が中国語話者からよく質問されるのは「いとこ」です。日本語では多くの場合「いとこ」とひらがなで書いて、どのいとこを指しているか、区別することは少ないですよね。ですが、中国語圏ではいとことの関係性(父方・母方、性別、自分より年上か年下か)を明確に分けるんです。中国語圏の人に「日本語では基本的に「いとこ」と言うときには性別や父方・母方の区別はつけないです」と伝えると、「え?じゃあ、もし区別をつけたい時はどうするんですか?」とほぼ必ず聞かれます(このような時、私は「書き言葉の時には区別することもできるし、「父方のいとこ」等と言う方法もある」と答えます)。

いとこに限らず、中国語では家族の名称が細かく決まっていて、その人が自分にとってどの血縁関係にあるかを明確にするのが普通なんですね。また、日本より親戚付き合いが活発な傾向があるので、雑談をしていても親戚の話が出てくることも日本より多い気がします。このような文化背景も、上記のような質問が出てくる理由の一つかもしれません。

 「参考」と「参照」

日本語だと「参考」は「いろいろ他のものと引き比べて、自分の考えを決める手がかりにすること」、「参照」は「他のものと照らし合わせてみること」です。(情報元:「参照」「参考」「引用」の意味と違い – 社会人の教科書)どちらも資料を見ることは同じですが、前者は「資料を見たうえで自分の考えを決めること」、後者は「他のものと見比べること」に重点を置いています。

この2つの語彙の意味は上記の通りとして、一般的な用法としては「参考」は「関連資料」のことで、分からなかった時に見るもの、「参照」は元データの在り処を示すもの、という意味で使うことが多いのではないでしょうか。どちらも見るかどうかは任意ですが、どちらかと言うと「参考」の方が重要度が高いという認識なのではないかと思います。

「参照」と「参考」の日本語・中国語間のニュアンスの違いについては、私の経験の中で非常に印象的だったエピソードがあります。私が以前メーカーに勤務していた時、私のチームと中国語圏の支社のチームがミーティングをする機会があり、支社の社員さんから「図面のこの部分についてもっと情報が欲しいのですが、追加資料はありますか?」と質問がありました。そこで、私の上司が「次のページに『参考』と書いてあるでしょう。そこに書いてありますよ」と言ったところ、前述の社員さんから「中国語では『参考』というのは「見ても見なくてもいい」という意味なので、見ていませんでした。『参照』と書いてあれば、必ず見ていたと思います」と言われ、私のチームの全員が、日本語と中国語の漢字の意味の違いに驚きました。(中国語では、「参照」は手本となるもの、といった、論文等に使うような正式なイメージだそうです。)当時私はすでに7年ほど中国語を勉強していましたが、「参考」と「参照」の意味が日本語と違うと気付いたのは、この時が初めてでした。(ビデオ通話で話した中国語ネイティブによると、「参考」と書いてあったから全く見なかったというのは少し極端ではないかと言っていましたが…(笑))実際にこのような出来事がないと、思いもよらないような違いですね。

学術用語は同じものも多い

ここまで、日本語と中国語で意味が異なる漢字語彙を紹介してきましたが、同じ意味の漢字語彙も多くあります。特に、学術関係(特に人文・社会科学関係)は日本語と中国語で共通しているものが多いです。というのも、日本語から中国語に逆輸入されたものが多いんです!

日本はアジアの中でも早い時期に近代化が始まり、西洋の文化を取り入れるにあたり、多くの新語を作りました。その後、中国が近代化を進める中で、日本が先に作っていた単語を逆輸入したのです。逆輸入されたのは、例えば「経済」、「理論」、「電気」、「国際」、「経験」等々。現代の生活に必要な単語ばかりですね。こういったこともあり、中国語話者にとっては、勉強する日本語が上級に近づくほど、かえって学習しやすくなります。

参考資料:https://otona-life.com/life/17846/

漢字って奥深い!

ここまで、日本語と中国語で意味が異なる漢字語彙について一緒に見てきました。皆さんの今までの日本語教育経験の中で、同じような誤用や質問はあったでしょうか。

漢字には多くの日本語学習者が苦労していますし、私たち日本人や中国語圏の方たちも、幼い頃から膨大な時間をかけて勉強してきました。その労力を考えると、個人的にはコスパが悪く感じることもあります。ですが、海外で公用語として使われているわけでもなく、どの言語グループにも属していない日本語にとって、同じ文字文化を共有している言語があることは、非常に貴重なことではないでしょうか。

皆さんも中国語圏の学習者の漢字語彙の使い方に注目してみたり、中国語圏に旅行に行かれる際は、漢字語彙がどのように使われているか、ぜひ目を向けてみてください。

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