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「な、なんか変なんだけど…???」
クラスでのアイスブレーキングや、雑談の中で、学生がふと発した一言に違和感を覚えつつも、すぐに直せなかったことはありませんか。
なぜ直せないのか。主な理由は、以下のようなものでしょうか。
・会話の流れを断ち切れなかった。
・あくまでも雑談。それゆえ相手が気持ちよく話しているのを邪魔するのは気が引けた。
・「訂正⇒説明」というフローには、ある程度まとまった時間が必要。だがそれが確保しにくい(とくにシラバスがあるグループレッスン時)。
・訂正箇所が、今日のメインの文型ではない(そこまで時間をとって説明していいものか)。
・そもそも講師が感じる違和感についての何故?を、学生に簡潔に説明する自信がない。あるいは、正直、理由がわからない。
今回は、私が体験した例(「そうです」の使い方に対する違和感)を挙げつつ、すぐに直せない場合、どうすればいいかについても考えていきます。
「そうです!」「・・・(そ、そうなんですか?!)」
以前、学習者が多発する「すみません」に対して私が感じる違和感を、こちらで取り上げたことがあります。というわけで、私の「なんか違和感シリーズ」第2弾、本日は「そうです!」です。
以前、プライベートで教えていた韓国人女性の口癖が「そうです!」でした。威勢よく自信に満ち溢れた「そうです!」を聞くたび、その使用感に違和感も覚えつつもなかなか直せなかった話をまずは聞いてください。
例1
私:「はい、授業を始めましょう。今日は前回の続き、P23からです。」
学生:「そうです!」
※これは「先生、その通り!」that’s right!の意味かしら、あるいは「了解しました!」noted.の意味かしら…
例2
私:「この語彙の使い方ですが、このような場面では使いません。」
学生:「そうです!」
※これは同意?もしくは、もう知ってた?!
1 違和感の理由について考える
例1
「そうです」は、そもそも、名詞文の質問に対する肯定の答えの意味でしか使えません。
名詞文⇒ご主人はイギリス人ですか。はい、そうです。
形容詞文⇒ご主人はいそがしいですか。×はい、そうです。〇はい、いそがしいです。
動詞文⇒ご主人は日本語が話せますか。×はい、そうです。〇はい、話せます。
例文1の中では、「今日はP23からですね・でしたっけ」など明らかな名詞文の疑問文ではないですが、確認のニュアンスを含む文であれば「そうです」という応答は自然なのですが、「今日はp23からです」という叙述文なので、そのリアクションとしての「そうです!」は文法的にはアウトということになります。
例2
そんなに自信持って言える?知ってたの?という違和感
ここは、講師が学習者が知らないこと、あるいは知らないと思っていることについて説明している場面です。もし仮にそれが学生にとって既知の情報であっても「そうですか(平板アクセント)」ぐらいがコミュニケーション術としては正解かもしれません。「わかりました」がベストアンサー(かな?)。
2 誤用をどう直していくか
例1
例文1は、文法としての間違いなので、比較的すぐに直しやすいです。文法というある程度ゆるぎないフレームに抵触することには納得してもらえる可能性もあるし、話も早いからです。ここでは「そうですね」と「ね」をつけて同意の表現にすると正解だと教えるのがいいかと思います。
例2
例文2は、非文か否かのジャッジが、使用文脈や、誰が誰に使うかなど場面や関係性によって異なってくるようなタイプのものです。
「そうです」という表現には、相手が先述した発言の繰り返しを避けるという機能のほかに「もちろん、そうです、当然です」というニュアンスが入るような気がします(繰り返す必要もなく当然というような)。
なので、「もちろんそうです」という当然性をアピールする表現ということであれば、いまいるのが日本語のクラスで、先生(教える)と生徒(教えられる)というという関係性の中では、誰がイニシアチブをとっているかと言えばやはり先生(であるべき)なので、先生からの文法説明を受けた上での学生の「そうです」というリアクションはちょっと強すぎる気がします(この先生、なんも知らないな、私のほうが知ってるわ、と思ったとしても…なんとなく失礼な感じを与えてしまうので)。
というようなことを、その場ですぐ説明!というのは講師側にも心理的(この場面では自分の面子を保つために言っているような気がするし)、そして技術的にもかなり難しいです。
3 では、誤用はどのタイミングで直したらいい?
訂正のタイミングを少しペンディングしてみて次のチャンスをうかがうという手も…
例えば、
・学生向けのブログ記事など、文字化してエッセイとして読むチャンスに期待
・パターンプラクティスなどきっちりとしたフレームがある練習のときには直すチャンス(ここを逃さない:場面はフィクションであり注意する先生方、注意される学生側にも心理的ダメージが少ない)
・作文やスピーチ(ある程度、まとめて書かせたり、話せたりすると直すチャンスがある)
以上のようなことも踏まえれば、雑談時のふとした間違いも覚えておくこと、それをあとで練習や宿題も積極的に取り入れることが大事になってきます。
補足情報…
「そうです」シリーズ
そうです、は日本の生活でよく聞くフレーズで、学生からどういう意味ですか、「そうです+ね・よ・か」違いはなんですか、という質問を受けることが多いかと思います。ここでまとめてみましょう。
<説明するときに出す英語と例文の例>
①そうですね agreement 同意
A: 日本のフルーツは高いです。
B: そうですね。(はい、高いです。私もそう思います。I think so.)
②そうですよ notification 教示、強調
A: 日本のフルーツは高いです。
B: そうですよ。(はい、高いんです。知らなかったんですか:私は知ってましたけど)
③そうですか(上昇イントネーション) disagreement 非同意
A: 日本のフルーツは高いです。
B: そうですか。(いいえ、高くないです。私はそう思いませんけど。I don’t think so.)
④そうですか (下降イントネーション)interjection あいづち ”I’m listening to you”のサイン
A: 日本のフルーツは高いです。
B: そうですか。(知りませんでしたorあなたはそう感じるんですね)
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