日本語文法「〜とき」:こんなところにトラップが!?

日本語文法「〜とき」:こんなところにトラップが!?

みなさんはこれまで「〜とき」を教えるときに、困ったことってありませんでしたか?

学習者の中には「“When=とき” 言葉を置き換えればOK!簡単だね!」と思っている学生もいるのではないでしょうか。でも実際に勉強してみると「あれ?うまく作れないじゃん・・・」。がっかりしている学生を何度か見かけたことがあります。

日本語母語者はこのテンス(時制)の微妙な違いを自然に使い分けることができますが、学習者は混乱することがあります。一見単純そうに見える「〜とき」ですが、なにかトラップがありそうですね。

今回は、日本語表現の中でよく使われる「〜とき」の表現について考えてみようと思います!

 

「〜とき」のトラップはどこにある?

日本語文法「〜とき」を使うことで、後件で表す動作、または状態がいつ起きたことなのか表すことができます。

<例文>

①映画を見に行く時、チケットを予約しておく。 

②映画を見に行く時、チケットを予約しておいた。

→映画を見に行く「前」にチケットを予約する。うちでオンラインで買うのでしょうか?わかりません。もしかすると、映画を見に行くことが決まったらその準備のためにコンビニかどこかでチケットを予約するのかもしれません。いずれにしても 、この「映画を見に行く」の場合は、基準点(=「チケットを予約する」という時点)より後に「映画を見る」という動作が起こることになります。

③映画を見に行った時、ポップコーンを買う。

④映画を見に行った時、ポップコーンを買った。

→どちらも「ポップコーンを買う/買った」のは映画館への移動が終了した「あと」のことですね。「どこでポップコーンを買いますか」→「映画館でポップコーンを買います」ということです。

 

この4つのパターンの『行く時』と『行った時』の使い分けを理解するのが、初級の学習者にとってはなかなか難しいのです。

なので、「①の文はどうして主節が過去なのに[行く時(未来)」ですか?]、[③はどうして主節が未来なのに「行った時(過去)」ですか?]という質問がでてくるのです。

学習者は『タ形=過去』というシンプルに考えている人が多いです。基本的に「タ形」は過去のことを表しますが、完了・結果の残存といったアスペクトを表わすこともできるということを教える側はしっかり理解しておく必要があります。

 

日本語のテンスとは?

「〜とき」のトラップの正体が見えてきましたね〜。

日本語の場合は主節と従属節の時制(テンス)が必ずしも一致するとは限りません。一方、英語の場合は的確に意図を伝えるために「時制(テンス)の一致」が基本的な文法ルールとしてあります。

日本語も英語と同じだと思い込んでしまうのでしょう。そりゃあ、混乱しますよね。

ここからはちょっと専門的になってきますが・・・避けては通れず・・・ということで、ここでちょっと日本語のテンスのお話。

日本語のテンスは絶対テンスと相対テンスに分けられます。主節は絶対テンスです。絶対テンスは発話している時点=「今」を基準点とする場合です。

一方、日本語の複文の従属節は相対テンスです。主節を基準に考えます。主節の後か前かで相対的にテンスが決まります。相対テンスは発話の時点以外を基準点とする場合なので、この場合の基準点は「チケットを予約する」「ポップコーンを買う」です。

 

どんな導入文が適当か。

私は「〜とき」を導入する前に学生たちに「英語と日本語の『When』の使い方は違うので、よく聞いてくださいねー!」と伝えちゃいます(笑)。ちょっと非道かもしれませんが、そうすることで、学生たちもその違いに興味を持ってくれて、集中力が高くなるように気がしています(完全に私の感覚ですが…。「英語と同じでしょう?」と余裕そうな学生もいますので、意外と効果的かと)。

私が導入文を作る際に意識しているのは、

   step1「ル形+ル形」→ step2「タ形+ル形」の順番で

学習者にとっては、従属節の中のテンス(のように見えるもの)で行動の順番が変わる、というのが理解しにくいところです。いきなり全てのパターンを見せてしまうとハードルがぐぐっと上がってしまうので、段階的に導入します。

まずは「〜とき」の意味を確認し、次に主節と従属節の関係を理解させたほうが良いかと思います。

 誰にでも当てはまりそうな場面・状況で導入文を考える

イラストを準備して導入文を提示したことがありましたが、見事に大コケしたことがあります。笑

導入で使う場面・状況設定は極力シンプルに!を意識しています。やっぱり「〜とき」の鉄板といえばこれですかね。

Step1: 日本人はごはんを食べるとき、「いただきます」と言います。

「いただきます」と言う (基準点) → ご飯を食べる (未来)

Step2:ごはんを食べたとき、「ごちそうさま」と言います。

「ごちそうさま」と言う(基準点)← ご飯を食べた(過去)

まずは、これを板書で見せると理解しやすいかと思います。これ以外の言い方はできませんからね。

そのあとで「友達がうちに来る時/来た時」、「旅行に行く時/行った時」など、どんな人でも経験があるであろう状況で後件を作らせたり、「〜とき、掃除をします」で前件を作らせたりして理解確認をしっかりすると良いです。

 

「〜とき」を使った練習の工夫

「〜とき」は状況を述べるだけで練習も単調になりがちですが、意外とQA練習は盛り上がります。人によって答えが色々出そうなキューを出すと面白くなります。また、感情を問うような質問も盛り上がります。「どんな時怒りますか?」「どんな時泣きますか?」などなど。いつも温厚なAさんが怒るなんて!とクラスメイト同士の新たな発見もあって面白いです。

 例えば…

Q「どんな時に泣きましたか?泣きますか?」

→「家族と別れる時!」「〇〇の映画を見た時!」「子供が歩きはじめた時!」

Q「旅行をするとき、必ずすることはなんですか?」

→「旅行をするとき、枕を持っていきます」「旅行に行った時、インスタの写真を撮ります。」「レストランでご飯を食べる時、必ず写真を撮ります!」

自分のことが伝えられるって嬉しいですよね。相手に自分を知ってもらうのも嬉しいです。どんなレッスンでも「自分のことがちゃんと相手に伝えられる」ということをゴールにしたいものです。 

レッスン準備は大変で、レッスン前日はドキドキなんてこともありますが、「失敗は成功のもと!」と言うことで、まずはやってみる。みなさんにとってのやりやすい方法を研究&試しみてはいかがでしょうか?

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