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日本人との会話における「印象の良いあいづち」とは?
突然ですが、会話中にこのように思ったご経験はありませんか?
(この人、私の話にかぶせてくる~。話しづらいな…)
(私の話、聞いてる??さっきからほとんど反応してくれないんだけど…)
(ただ共感してほしいだけなのに、必ず自分の意見を言い返してくるなぁ…)
これらは相手側の聞き方に問題があるケースと言えます。
日本人同士の会話でもこのような「聞くスキルの欠如問題」にときどき遭遇しますが、難しいのは異文化間のコミュニケーションの場合です。
「日本人は話を聞くときにうなづきすぎる!」「日本人はあいづちが多く、こちらが話すのを邪魔してくる!」…といった英語話者の話も耳にします。
そもそも印象の良い話の聞き方とはどのようなものなのでしょうか?日本語教師であるなら説明ができて損はないと思います。
というわけで今回は、印象の良い聞き方の要素の中で特に重要な役割を持つ「あいづち」にフォーカスして考えていきます。
あいづち上手は会話上手
本題に入る前に個人的な話で恐縮ですが、私は前職、コールセンターでマネージャーをしておりました。
業務の一つにコールセンターの品質管理があります。オペレーターとお客様との会話音声を聞いてモニタリングシートを使い項目ごとに点数をつけていきます。ひたすら音声を聞いて評価した後は、オペレーターさんたちに良い点をフィードバックし、改善点は指導していくというなかなか地味で根気が必要な業務です。
この品質調査項目の中に「聞くスキル」があります。この「聞くスキル」は「復唱・要約力」「あいづち」「質問力」「意図把握力」「理解度への配慮」などから構成されています。
前職を退職し独立してからも、様々な自治体や企業の会話品質調査をしてきましたが、項目や配分に多少の違いはあっても基本構成は同じです。
さて、これまで何千件というオペレーターさんの音声を調査してきて、ひとつ確実に言えることがあります。
それは、「あいづち上手は会話上手」ということです。
「あいづちなんて意識せずとも誰でも簡単にできるもの」…と私も最初は思っていましたが、上手な人とそうでない人には驚くほどの差があります。
あいづちが上手な人はお客様との会話が非常にスムーズで、安心感を与えます。そうでない人は会話がギクシャクしており、相手を不快にさせることさえあるのです。
良いあいづちを心がけましょう…というのは簡単です。では「良いあいづちとは何ですか?」…と、あたらめて聞かれるとなかなか答えにくい。実際、私がこの質問をして明確に答えられたクライアント様はほとんどいらっしゃいません。
良いあいづちの4つの特徴
仕事でたくさんの会話音声を聞いているうちに、良いあいづちには以下の4つの特徴があることが分かってきました。
①適当な回数
「はいはいはい」と頻繁にあいづちをうつと相手は話しにくいですよね。急かされているような気分になります。また、少なすぎると「聞いてる?」と心配になってきます。
②適切なタイミング
私はよく餅つきに例えて説明しています。杵でお餅をつく人が話し手で、お餅をひっくり返す人が聞き手です。早すぎず遅すぎずちょうど良いタイミングでお餅をひっくり返さないと杵を持つ人がうちづらいですよね。
③豊かな表情
ここでいう表情とは声のトーンとも言い換えられます。同じ「はい」でも明るい「はいっ」なのか暗い「はい…」なのか、「はい!」なのか「はぁい」なのか(文字にすると難しいですね…)、様々な表情・トーンがあります。ずっと同じ表情でのあいづちは良いあうづちとは言えません。
④様々なバリエーション
これは様々な表現を使ってあいづちをうつということです。ちなみにあいづちの「さしすせそ」という言葉があるのでご紹介いたします。
- さ「さすが」「さようでございますか」
- し「知らなかったです」
- す「すてきですね」「すごいですね」「すばらしいですね」
- せ「せっかくなので」
- そ「そうですか」「そうだったのですね」
会話品質調査の際はこれらの項目を基準表に基づいて評価していくわけですが、やはり「会話が上手だな~」「聞き上手だな~」「安心感があるな~」という方はこのあいづちの項目の点数が高く、ひいては全体の点数も高いという傾向があります。
良いあいづちの定義が文化によって違う!?
ここまでは日本人同士の会話でのあいづちの話をしてきました。でも日本人同士の会話では自然でも、海外の方にはこれが通用しなくなることがあります。
まず、日本人同士のコミュニケーションで重視されるのは共感です。このような文化的背景をもつコミュニケーションの場合、あいづちの回数やタイミングは、相手の話に対しての興味・関心度をそのまま示しています。
『感じのよい英語 感じのよい日本語 日英比較コミュニケーションの文法』(水谷信子著)によると、日本人のあいづちの平均回数は1分間に10回~20回とのこと。
例として次の会話を見てみましょう。
A: 今日、天気ヤバイね~
B: うんうん(うなづきつつ)
A: すごい雪だから早く起きたんだけどさぁ~
B: そうしたら?
A: やっと雪かきが終わったと思って家出たら、、、
B: バスが超遅れた?
A:そうなのよ!もうノロノロの激混み!
Bさんは「うんうん」「そうしたら?」とあいづちをうつことで、「話を続けて大丈夫ですよ」というサインを出しています。つまり会話が話し手と聞き手の共同作業となっているのです。
もし聞き手のBさんがほとんどあいづちをうたなかったら、話す側は「私の話に興味がないのかな?」と不安になってしまうでしょう。
ただCotoの学生さんの多くは英語圏の方です。英語話者はコミュニケーションにおいて、相手の独立を大事にすると言われています。相手が話している最中に口をはさむことは妨害であり、マナー違反となることがあるのです。
ミスコミュニケーションを防ぐために
日本の会話文化vs英語圏の会話文化…と、きれいに分けられるものではありませんが、様々な文化圏の方に接する日本語教師は、良いあいづちの定義が文化的背景によって違うことは理解しておいた方がよさそうです。
またレッスン中に学生さんの聞き方に問題を感じたときは、学生さんが日本人との会話で困ったり相手を不快にさせないためにも、日本人にとっての良いあいづちを紹介できるといいとよいかもしれませんね。
ちなみに私は英語の他にある言語を話しますが、その言語の母語の方々がよく私の話を遮ったりかぶせてきたりするので、何度かキレかけたことがあります。今思えばアレも文化的差異だったように思います(遠い目…)
今回は私の仕事の経験をもとに記事を書かせていただいたので、日本語教育の場にそのまま当てはまらないかもしれませんが、学生さんとのコミュニケーションにおいて参考になることがあれば嬉しいです。
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