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学生との向き合い方に生かすコーチング
先日「学生との向き合い方に生かすコーチング」と題した勉強会が行われました。
いつも勉強会を主催してくださるHidariさんがインタビュアー、コトハジメ編集長でもありベテラン日本語教師のWatanabeさんが司会、そしてわたくしMatsubaraがなんとゲストに!…大変恐縮でございます。
勉強会は事前に教師の方々からいただいていた以下の質問に答える形で進められました。
- コーチングとティーチングの違いは?
- コーチングではアドバイスをしてはいけないって聞いたけど…
- 実力以上の高い目標を掲げる学生にはどう対応したらいい?
- 宿題をやってこないので学習が遅れている学生をどうしたら…?
勉強会は、コーチングの世界をちょこっと覗いてみよう!というスタンスでした。そのためあまり専門的な内容ではなく、考え方のヒントとなるようなお話をさせていただきました。
今回の記事では勉強会での内容の一部と、ゲストとして関わらせていただいた気づきをシェアしたいと思います。
なおコーチングについては以前にも記事にしましたので、よろしければこちらもご覧ください。
無理な目標設定をしたがる学生への対応について
事前にいただいていたいくつかの質問のうち、今回は事後アンケートで反響が多かった内容について、ひとつご紹介いたします。
質問は「無理な目標設定をしたがる学生さんへの対応について」。
- 半年でN1合格?!まだN4レベルだよ?絶対そんな高い目標無理だって!
- 1年で日本人みたいにペラペラに??いや、語学をなめてもらっちゃ~困るよ!
- そのレベルになるには…そうねぇ…毎日10時間は勉強が必要だけど大丈夫??
そんなツッコミを入れたくなるような高~~い目標が学生さんの口から出ることってありますよね(汗)
キラキラした目で目標を語る学生さんの話の腰を折りたくはない。でも、挫折が目に見えてるんだけど…と内心ヒヤヒヤしてしまう…。そんなご経験がある日本語教師の方は多いようです。
私がビジネスコーチングの研修をするときも、受講者様から「うちの部下は雑用すらろくすっぽできないのに、一丁前に企画をやりたいとか言うんですよ~」といった悩みや嘆きの声を聞くことがあります。
なぜこのような身の丈に合っていない目標を設定したがるのでしょうか。
ティーチングでアプローチ
それは語学学習者に関わらず、初心者は目標到達までの道筋が見えていないからだと思います。
これを登山に例えてみましょう。
プロの登山家ほど念入りな準備をします。一方、初心者の中にはサンダルやヒール・軽装で山登りをしようとする人もいるのだとか。そして、遭難し救助される…という流れになるようです。
これは初心者ゆえに経験や知識がなく、しかも経験者の話も聞かず、自分で調べもしなかった結果です。
ですので、初心者に対してはコーチングでなんとかしようとするよりも、まずは目標達成までの道筋を客観的な数値などで示し教える=ティーチングすることが望ましいと考えます。
例えば日本語能力検定でしたら、級ごとに必要な勉強時間や漢字の数、または実際に合格した人がどのような勉強をどのくらいしたかといった情報です。
そうすることで、この先に待ち構えている高い壁に出会ったときの心構えができるでしょう。
コーチングでアプローチ
あえてコーチングでこの状況に対応する場合についても述べておきます。
そもそもその学生さんは、なぜそんな高~い目標を設定したがるのでしょうか?相手の頭の中にあることを共有してもらう必要がありそうですね。
コーチングではコーチと相手が認識を合わせるための質問をすることがあります。私はこれを「相手と同じ絵を見る質問」と勝手に名付けています。
「〇〇さんがその目標を達成したら、どこでどんなことをしたいですか?詳しく教えてほしいな!」
このような質問をし、どんどん話を引き出すと、相手の本当の願望が見えてくるかもしれません。
その結果、「実は通勤中によく見かけるきれいな女性が気になって…。話しかけて雑談したいな~と思っているんです!」という話が学習者さんから出てきたとしたらどうでしょうか?「それが目的なら、N1合格なんて必要ないやーーん」となると思います。
勉強会を通して思ったこと
この勉強会に関わらせていただいた過程で私が感じたことを3つお伝えしたいと思います。
なんでもかんでもコーチング!はさすがにムリ
ビジネスでも日本語教育の場でも、部下や学生さんとの接し方の中で何かしら悩み、そしてその解決を求めてコーチングを学ぶ方は多いようです。
しかし、です。コーチングはたしかに素晴らしいコミュニケーション手法ではありますが、万能ではないし、他者を変えるための魔法でもありません。
特にオンライン日本語教師は、レッスン時間以外での学生さんとの接点がほとんどありませんし、カリキュラムが決まっているグループレッスンではレッスン中に学生さんの話をじっくり聞く時間の確保は難しいです。
コーチングマインドはどの教師にも必要だとは思いますが、仮にコーチングをしようと思っても環境的な制約があるのが現実でしょう。
ただ、レッスンの進度が比較的自由に設定でき、1on1であるプライベートレッスンなら、コーチングが生かせる場面はあると思います。
日本語教師はあくまでもティーチャー(教えるプロ)
日本語教師は言うまでもなく、日本語を教える人=ティーチャーなので、まずティーチングありきだと考えます。
学生さんも私たちにコーチとしての役割ではなく、ティーチャーとしての役割を求めているはずです。それに、日本語教師にプロ並みのコーチングスキルを求めるのは過酷じゃないかな~と思います(誰も求めていないと思いますが)。
気楽にいきましょう!
cotoではどんなキャリアも生かせる
実は私が一番ビックリしているのはコレです。私は日本語教師1年生です。なので、勉強会のゲストのお話をいただいたときは、「え…私で大丈夫かなぁ」と恐縮してしまいました。
わたしは最初日本語教師としてcotoと契約を結んだわけですが、日々のレッスンの他に、このコトハジメの執筆や勉強会へのゲスト参加など、たくさんのチャンスをいただいております。
「日本語教師はそれまでのキャリアや人生経験がすべて生かされる職業」と聞いていた通りでした。
私が本業で行っている仕事(現在、企業研修やコンサルティングサービスを提供している会社と契約しており、これまで民間企業・自治体・大学などで700回以上の登壇経験あり)は、たしかに記事の執筆や勉強会との相性がいいと思います。でも、これまでのキャリアや人生経験が生かせるのはすべての教師に言えそうです。
特にこのcotoという職場では、「先輩・後輩」とか「日本語教師〇年目」のような上下の人間関係をこれまで感じたことがありません。「フラットな人間関係」とか「学び合う関係」とか「柔軟な仕事・役割」が好きな私のような人にはcotoにピッタリだと思ったのでした。
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