中級文法コラム23 「にとって」「からすれば」
その国の人にとって当たり前のことでも、外国人からすれば不思議に思うこと、理解できないことがあります。例えば、ラーメンを食べるときにズズッと音を立てて食べること。外国人にとっては不快なことのようですが、日本人からすれば麺類はすすって食べるほうが食べやすいですね。日本人にとってはそばなどをよりかっこよく食べる方法がすするで、それが粋な食べ方なんて言う人もいます。さすがに、レストランでズズズッ〜と食べる人は減ってきましたけど、家で一人で食べるときはついズズッ〜と…
さて、今回は「にとって」「からすれば」を取り上げましょう。
- その国の人にとって当たり前…その国の人の立場で考えると当たり前。
- 外国人からすれば不思議…外国人の立場で考えると不思議。
- 外国人にとって不快…外国人の立場で考えると不快。
- 日本人からすれば麺類はすすって食べるほうが食べやすい…日本人の立場で考えると麺類はすすって食べたい。
全部同じやないかーい!!どちらも、その人の立場で考える問う意味ですね。じゃあ、違いはどこにあるのでしょうか。
にとって
- 私にとって、ペットのミーちゃんは家族のような存在です。
- 日本人にとって、桜は特別な思いのある木です。
- あなたにとって、仕事とは?
- 日本語を学ぶ学生にとって、敬語を理解するのは大変なことです。
「にとって」は、感想、判断や評価の内容が後ろに続きます。その人の視点から思うこと、その人の立場から考えられることなど、「その人」の視点からの考えをそのまま伝えているようです。
にとっては
ちなみに、「にとって」に「は」をつけると、対比的な意味合いを持たせることができます。
- 他人にとってミーちゃんはただの猫かもしれないけど、私にとっては大事な家族だ。
- あなたにとっては簡単かもしれないが、私にとっては難しいんです。
- これはただのボールペンだが、私にとっては宝物だ。
- 日本人にとって、ラーメンをすするのは簡単ですが、外国人にとっては難しいようです。
日本人と外国人の視点から、ラーメンの食べ方について比較しています。
にとっても
そして「にとって」に「も」をつけると、双方の視点からの意見が一致している時に使えます。
- 敬語は外国人にとって難しいものですが、日本人にとってもわかりにくいことがあります。
- 桜は日本人にとって特別な木ですが、日本に住んでいる外国人にとっても季節を感じる美しい木だと感じるようです。
- 誰にとっても大切なのは健康ですね!
からすれば
「からすれば」で例文をあげてみましょう。
スパゲッティの食べ方について
- イタリア人からすれば、音を立てて食べるのは不快だ。
- 日本人からすれば、麺類は音を立てて食べるとおいしく感じる。
敬語について
- 日本人からすれば、上下関係がはっきりわかるし、丁寧な感情が伝わるので便利だ。
- 外国人からすれば、謙譲語や尊敬語など使い分けが多すぎてわかりにくい。
桜について
- 日本人からすれば、春を感じる特別な木だ。
- 外国人からすれば、ただの木だ。(そんなことはないか…)
と、このように「からすれば」は、あるテーマに対して複数の立場から考えると、見ると、言うというときに使っているのではないでしょうか。
もちろん、「日本人からすれば、桜は特別な木だ」と単独の文で使うことはできますが、その背景には、他の国の人の視点で考えれば他の意見もあるということをほのめかしているように思います。でも、他の視点に関係なく特別なんだ!と言いたいのなら、「日本人にとって、桜は特別な木だ」が適切です。
- 日本人にとって、麺類は音を立てて食べるものなんだ!(心の声:他の国の習慣なんか知らんよ!)
- 外国人にとって、敬語は難しすぎる!(心の声:なくなればいいのに!)
こちらもそうですね。他の立場からの視点は関係なく、「その人」の立場からの意見が強調されています。
私たち日本人にとって、無意識のうちに使い分けている言葉でも、学習者からすれば、使い分けのルールや基準はどこにあるのか気になるものです。ただ、日本人にとっても、そのルールや基準を説明するのは難しいところがあります。学習者にこれらの違いをどう説明すれば伝わるのか、学習者の立場に立って考えないといけませんね。
Customer Reviews
Thanks for submitting your comment!