日本語教育:シャドーイングのすすめ
前回は「多読のすすめ」ということで、「読む」にフォーカスしましたが、今回は「聴く」にフォーカスしていきたいと思います。
「聴く」ための勉強法といえば代表的な二つの方法が「シャドーイング」と「ディクテーション」。
シャドーイングとディクテーションは「聞き取れないところを特定して改善する」という意味では同じ目的を持っていますが、この2つは聞こえてくる日本語に対してのアプローチが違います。
シャドーイングとディクテーションは似て非なるもの
ディクテーション → 書き取りの正確性が向上する → 書く能力がアップ
シャドーイング → 発音が向上する → 話す能力がアップ
ディクテーションでは「細かく深く聞く」という聞き方をします。日本語レッスンの現場でも日常的に行われています。皆さんも語学学習の際に学校で、またはご自分でされたことがあると思います。
私も学生のころ、自分が好きな英語の曲や好きな映画のワンシーンをディクテーションしたりしていました。完璧に書き取るのは時間がかかりますが、何度も何度も聞き直しているとそのフレーズが自然と頭に入ったりもします。覚えたりするときには、記憶させるために自然と口が動いていることがありますね。このようなやり方をすれば、「聴く」「話す」「書く」の3技能の練習になり一石三鳥なのですが、結構時間がかかるのがネックです。
シャドーイングはお手軽さが魅力です。シャドーイングは聞こえた音声を影のようにひたすら発声していくだけ。いつでもどこでもできます。シャドーイングが日本語学習の方法として注目されている理由は、ネイティブスピーカーならではの「発音」、「リズム」、「イントネーション」、「スピード」などを改善し、より伝わりやすい日本語を身につけることができるからです。練習を重ねることでリスニング力、語彙力の強化にも繋がります。
自然な日本語で話せるようになりたいという日本語学習者は少なくありませんから、シャドーイングはそんな方にはもってこいです。「発音」、「リズム」、「イントネーション」、「スピード」などは相手に自分の言いたいことをスムーズに伝達する上で非常に重要です。「伝わった!」という場面が増えれば増えるほど自信がつきます。話すチャンスが増えれば、スピーキング力の向上にもつながりますね。
シャドーイングの方法
やり方はいろいろありますが、自分のレベルにあったもの(または下のレベルのもの)で、テキストを見ないでシャドーイングすると力がつきます。聞くことと発話することにフォーカスすることができるからです。電車の中で、または散歩しながら、料理しながらなど「ながらシャドーイング」もありです。
1. テキストを見ずに聞き、何のトピックについて話されているのか、ざっくりと全体の意味をつかみます。
2. テキストを見ずにシャドーイングします。途中でつまずいても止まらずに進みます。発音、イントネーション、リズムに注意しながらシャドーイングをしていきましょう。スムーズに言えるまで繰り返しましょう。
3. 聞き取れなかった箇所は後でスクリプトを確認するようにしましょう。
おすすめのシャドーイングのテキストはこの2冊
シャドーイングはニュースなどを使ってもできますが、自分のレベルにあったものがいいという場合はテキストでしましょう。私がレッスンでよく使うテキストはこの2つ。初級からできるのでおすすめです。
『シャドーイング 日本語を話そう 初〜中級編』くろしお出版 (2006/9/25) ※中上級編もあります。
『シャドーイングで日本語発音レッスン』スリーエーネットワーク (2012/3/26)
「聴く」練習(リスニング)といってひとくくりにはできません。ディクテーションとシャドーイング、書く能力をアップさせたいのか、話す能力をアップさせたいのかによって是非使い分けてみてください!
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