ビジネス日本語を教える:教案作成にchatGPTを使う

教案作成にchatGPTをどう使う?

chatGPTは、ビジネス日本語の教科書の代わりになるか

昨今、ビジネス日本語ニーズが高まりを見せていること、それに応える難しさについて、先日記事を書きました(コチラ)。また、その中で、だれにでも使える(汎用性のある、万能な)教科書がないということについても触れました。

一言に「ビジネス日本語」といっても、業界や会社形態、本人の置かれている立場や求められている日本語力や場面など、学生によって個別具体的であり、その学生の現在の日本語力という要素を加えると、さらに変数が増えます。このような現状から、完璧な「教科書」の存在は、ありえないと言っても過言ではないでしょう。

出口がなさそうなこの問題に、光明となってくれそうなツールがあるのでは?それは昨今話題にことかかない生成AI、chatGPTなのかもしれない…。

chatGPTは現在(2025年1月)o4まで進化しており(有料)、SNS上でも、その有能さに言及している人、運用している人が多い印象を受けます。また、15歳以上の学生の約4割がChatGPTを利用、教職員の約3割も利用経験があるとの報告(NTTドコモ モバイル社会研究所、2024年1月)、もあります。コトハジメでも、教案作成に生かせないか検証してみたこともあります(コチラ)。そのときは、ややウケ(教案のフローは悪くないけど、細部は調整要、しかも文法の正誤判断、練習の適切性などは教師の経験値や総合力が最終的には必要)という結果でしたが…。

というわけで、今回は最新(とはいっても無料版)のchatGPTを使って、できるだけ詳しいプロンプト(どういうことをしてほしいかの指示や要求ワード)を入れつつ、プライベートの「ビジネス日本語」クラス、50分の授業案を書いてもらう実験をしてみました。

プロンプトを書く

「レッスン概要」と「対象者情報」という2点について、詳細に以下のような指示(プロンプト)を出しました。

レッスン概要

プライベートレッスンでビジネス日本語を教える

テーマ:確認の場面で使える語彙と文型の習得 

時間:50分

対象者情報

国籍:中国

言語:中国語、日本語、英語

レベル:N1合格済

年齢:22歳

背景

日本企業で働くことを目指している大学生。

漢字知識は豊富。

中国人特有のアクセント、語彙の選択、流暢さに課題がある。

要望

日本社会での言語力向上。

今回は「確認」という機能場面での適切な語彙、文型を学びたい。

chatGPTが出してきたレッスン内容

プロンプトに基づき、chatGPTが出してきたのは以下のような教案でした。

1. 導入 (5分)

  • 挨拶とウォームアップ
    • 簡単な会話でリラックスした雰囲気を作る。
    • 例:「最近、大学ではどんなことを勉強していますか?」
  • 今日の目標の説明
    • 「確認する場面で日本人らしい言い回しを使えるようになる。」

2. 語彙と文型の学習 (10分)

  • 語彙リスト
    • 確認する:確認させていただきます / 再確認する / 確かめる
    • 間違い:誤り / ミス / 訂正
    • 承認:了承する / 承認する / 確認済み
  • 文型リスト
    • 確認させていただいてもよろしいでしょうか。
    • 念のため、再確認させていただきます。
    • もし誤りがあれば、ご指摘いただけますか。
    • ご確認のほど、よろしくお願いいたします。

3. モデル会話 (10分)

  • 状況設定
    • 学生が日本企業のインターン中、上司に資料の確認を依頼する。
  • 会話例

学生:「お忙しいところ恐れ入りますが、こちらの資料をご確認いただけますでしょうか。」

上司:「わかりました。少し時間をいただいてもいいですか?」

学生:「もちろんです。もし内容に誤りがあれば、ご指摘いただけると助かります。」

4. ロールプレイ (15分)

  • ペア練習
    • 講師が上司役、学生が確認を依頼する練習。
    • 学生が上司役、講師が部下役で練習。
  • バリエーション
    • 電話で確認を依頼する場面。
    • メールで確認依頼をする場面。

5. 応用練習 (5分)

  • 語彙と文型の入れ替え練習
    • 例文を出し、学生に語彙や文型を入れ替えてもらう。
    • 例:「再確認させていただきます」→「もう一度確認させていただきます。」

6. フィードバックとまとめ (5分)

  • フィードバック
    • 発音やアクセント、文型の使用について具体的に指摘。
    • 良かった点を褒める。
  • まとめ
    • 今日学んだ語彙と文型を復習。
    • 次回のレッスンの予定を共有。
    • 宿題(例:「今日学んだ文型を使って確認依頼のメールを作成する」)を出す。

補足資料

  • 参考リンク:ビジネスメールの書き方や確認表現の例。
  • 発音練習のための音声資料:講師が作成するか、既存の教材を使用。

所感

みなさんは、この教案を見て、どう思いましたか。私は素直に「コレ、使える!」と思いました。とくに語彙とその言い換え練習などは、やってみたいタスクであったものの、語彙の選択には時間を要しますし、大きいデータから抽出するのが得意なAIの手を借りない手はないと感じます。

さらに、とくにいいと思った点を挙げると、

<いい点>

・バリエーション:「電話」という他の場面や「文書」という他の技能にも練習を拡大している。

・宿題:実は講師側も忘れがちなタスクの負荷。

・語彙リストを作ってというプロンプトは出したが、練習をさせるという点は指示していない。にもかかわらず、入れ替え練習をさせるところまで発展させてくれている。

改良点、講師側で付加すべきものと思った点は、

<もっと>

・語彙リストを拡充させる(もっと練習があってもいい)

・もうひとつぐらい場面設定があってもいい。(「確認」という機能のままで)

まとめ

chatGPTを教案作成に取り入れるためのコツのようなものを、以下簡単にまとめます。

・プロンプトは詳細でより具体的な指示を与えること。

・AIには言語の機能(ここでは「確認」)にフォーカスをおき、具体的な場面は学生のニーズに合わせてカスタマイズするとよい。そうすると、AIが適切な語彙を出してきてくれる。もっと語彙を増やしたければ講師自身で足して、練習も入れる。が、その過程においても都度AIにこの語彙の同意語をいくつか出してなどと、個別に指示を出すといい。講師側には、教案をふくらませていくという気持ちが必要。

 

 

 

 

 

 

 

 

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