日本語クラスマネジメント法:レベル差のあるクラスの場合

レベル差のあるクラスのハンドリング

「クラス内で日本語力に差が大きくて、どう授業を進めればいいのか困っている」「レベル差が激しくて教えにくい」「できる学習者がつまらなそう」「口が重い学習者がいて、なかなか授業が進まない…」「どのレベルの学習者に合わせればいいのでしょうか」・・・

このような質問を講師から受けることが多々あります。これといった正解はないかもしれませんが、皆さんは自分ならこうするという対処法、お持ちでしょうか。

どんなクラスにもレベル差は必ずある!

日本語学習経験ゼロの学習者でないかぎり、どんなクラスにもレベル差は必ずあります。

「文字の習得が遅い」「漢字が苦手」「活用ができない」「語彙力が乏しい」「名詞や形容詞の接続が苦手」などなど。レベルが上がるにつれてレベル差は生まれてくるものです。また、それぞれの勉強量もスピードもセンスも意欲も異なります。「昔、国で勉強したことがある」「独学や自然習得でなんとなくここまできてしまった」など学習背景が異なる場合もあります。レベル差があるのは当然のことなのです。

ということで、今日は「どんなクラスにもレベル差は必ずある!」を前提にどうレッスンを進めた方がいいか考えていきましょう。

 

学習目標を達成するために何をすべきか

実際のレッスンで「ビハインドの学習者に発言してもらうたびに授業が中断してしまう」、「できる人に合わせるとビハインドの学習者がおいてけぼりになってしまう」、やりにくい、まいったな〜。永遠の課題ですね。よくわかります。

ここで「どのレベルの学習者に合わせるか」を考えると、あちらを立てればこちらが立たずで永遠に課題は解決しません。それに、講師自身の気持ちが揺れている状態だと、学習者が満足するレッスンを提供するのは難しいです。なので、「どのレベルに合わせるか」ではなく、「学習目標を達成するために何をすべきか」と考え方を変えてみてはいかがでしょうか。

準備編:観察と分析

学習目標を達成するために、私たち講師はいったいどんな準備ができるのでしょうか。まずは、いろんな観点から難易度を自分なりに整理してみましょう。

たとえば・・・

語彙の種類:基本語彙 ⇨ 最近習った語彙(新出語彙)

② 一文の長さ:短い文 ⇨ 長い文、単文 ⇨ 複文 ・重文、1文に出てくる文型は1つ⇨複数

練習方法:たとえば、パターンプラクティスなら・・・

反復練習(リピート) ⇨ 変形練習 ⇨ 代入練習(入れ替える場所は目的と難易度により、一箇所にしたり複数箇所にすることができる)⇨ 拡張練習(講師が提示した言葉をつなげて長い文を作っていく)⇨ 完成練習 ⇨ 応用練習(QA:closed questionでyes/noで答えられるもの⇨open questionで5w1hを使った疑問文)や会話練習

学習者ができることってStep by Stepで徐々に多くなってくるんですよね。このようにいろんな切り口があることを講師が理解した上で学習者をよく観察すると、学習者がどこでつまずいているのかを知ることができます。

④ 発話のさせ方

  • コーラス:しっかり覚えて欲しいキーセンテンス
  • チェーン:疑問文がうまく作れるようになったら(ただし、人数が多くなると間延びしてしまうこともある。途中までチェーンで練習の見本を見せ、あとはペアワークなどにするのもよい)
  • ペア:テキストの会話練習などフレームがしっかりあるもの
  • フリー:ディスカッションなど自由に発話させるスタイル(フリートークで話した相手の話を最後にまとめて発表する活動を入れると、さらに難易度があがる。インタビュアーの聞く姿勢も変わるので◎)

みんなで言うか、一人で言うか、みんなの前で言うか、、、チャレンジの度合いが変わってきますね。できることを広げながら、ハードルを徐々に高くしていくと負荷が少ないです。

 

実践編:ハンドリング

少人数制の会話重視のクラスでは、できるだけたくさん学習者に発話をさせたいです。また、クラスに参加する全員が「今日はこれができた!言えた!!」というのを1つでも多く持ち帰ってほしいです。この経験の積み重ねが満足度UPとモチベーションUPにつながりますからね。

講師の皆さんも普段、ペアの組み方や発話させる内容や順番などを工夫されていると思いますが、どのようにハンドリングすれば、全員が満足できるレッスンができるのでしょうか。

たとえば、1回のレッスンの中で合わせる相手を変えていくのも方法の一つです。Step1のプロセスを踏んでいれば、講師は何を誰にどう発話させていくかを戦略を立てることができます。

レッスンは通常、①導入→②基本練習→③応用練習という流れで進んでいきます。難易度も①→②→③で上がっていきますので、意識する学習者=優先的に発話させる学習者を・・・

①導入は「下位レベルの学習者」からリピート

②基本練習は「中位レベルの学習者」を意識した練習

③応用練習は「上位レベルの学習者」を意識した練習(はじめに上位レベルの学習者がモデルを見せることになる。下位レベルの学習者が準備する時間が作れる)

このようにチャレンジの度合いに考慮し、レッスンの中のどこかで学習者が「できた!言えた!!」を実感できる場面を作ります。

 

さいごに

講師は「今日はこれを必ず習得して帰ってほしい!!」とつい完璧を求めがちですが、文型や活用などその日にやるべきことがクラス内で未達の場合でも100%をすぐに求めない、少し長い目で見てあげることも必要なのかと思います。クラスの中で同じ文型や活用を回を重ねて練習すれば、できるようになるということを体感させてあげたいです。

また、講師がビハインドの学習者にかまいすぎないというのも重要かもしれません(かまいすぎると本人にとって負担、そもそもビハインドだという自覚がない場合も…)。

いずれにしても、このようなことがさりげなくサラッとテンポよくできるとプロらしく見えます。学習者に気を遣っていることを気づかせないのもプロとして重要なことですよね。堂々と平常心を装ってやりきりましょう!

何事も「彼れを知りて己を知れば、百戦して殆うからず」です。よく観察し、いろんな角度で分析し、戦略を立てる。しっかり準備をしておけば、講師自身も楽しくレッスンができます。その楽しさは学習者にも必ず伝播するはずです。

文法の分析や教案を作るだけでも大変なのに〜と思う方もいらっしゃると思います。大丈夫です。私もまあまあの年月をかけてここに辿り着いています(笑)。まずは頭の片隅にでも置いておいてください。ここにある全てをいっぺんにはできませんが、ちょっとした心がけで何か変化があるかもしれません!

 

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