中級文法コラム26 残念な結果の文型を集めてみた!
A:あ~! もう!
B:Aさん… 荒れてますね… どうしたんですか…?
A:聞いてくださいよ。去年から力を入れてきたあのプロジェクト、山田さんのせいで流れちゃったんですよ!B:え? どういうことですか? この前まで順調だって言ってたじゃないですか。
A:そうなんですよ。システムも完成してあとは先方にお披露目するだけだったのに、プレゼン担当の山田さんが、プレゼンの準備ができなかったって、急に休んでしまって…
B:そんな無責任な…
A:で、プレゼンは散々で、先方もカンカンで、部長にも「大損害だ!」って大目玉食らっちゃいましたよ。
B:で、山田さんは?
A:いろいろ言い訳したあげく、会社を辞めちゃいました。
B:やめちゃったんですか!?
A:あ~あ、山田さんにプレゼンを任せたばかりにこんなことになるなんて… 1年努力してきたかいがないですよ…
さてさて、長くなりましたが、今回は残念な結果の文型を集めてみました。今日は、「せいで」「ばかりに」「あげく」「かいなく」の4つを取り上げます。
せいで
まず、一番よく使う「せいで」から見ていきましょう。
- 台風が来たせいで、楽しみにしていたフェスが中止になった。
- 電車が遅れたせいで会社に間に合わなかった。
- おまえのミスのせいで試合に負けたんだ!
シンプルに、前件が原因・理由で、後件のような残念な結果になったと言いたいときに使いますね。
反対は「おかげで」ですね。前件が原因・理由で、後件のようないい結果になったときに使います。
- 台風のおかげで休講になった。
- 電車が遅れたおかげで、事故に巻き込まれずに済んだ。
- 相手のミスのおかげで試合に勝てた。
このように、同じ前件でも、話者の立場やとらえ方でいい結果にも悪い結果にもなります。ここに含まれる気持ちは英語などに直訳できませんね〜。
ばかりに
- フライトの時間を確認しなかったばかりに、飛行機に乗り遅れてしまった。
- 身長が1センチ足りないばかりに、ジェットコースターに乗れなかった。
- 彼女は有名であるばかりに、自由に行動することができない。
こちらは、「前件だけが原因・理由で、悪い結果になった」というときに使います。
前件のことさえなければ、悪い結果にならなかったのに…、という気持ちが含まれていると思います。前件の理由は自分の不注意もあれば、自分にはどうすることもできない理由もあります。自分の不注意が原因なら後悔のニュアンスも含まれます。また、どうすることもできないことが理由の場合は、理不尽なことへの嘆きの気持ちが入っているように思います。
あげく
- 安い給料でこき使われたあげく、クビになった。
- 彼は親の反対を押し切って留学したあげく、卒業できずに帰国した。
- 2時間議論したあげく、何も解決しなかった。
前件には、努力や苦労、長い間継続したことなどが入り、後件にはその努力や苦労が報われなかったり、無駄になったという結果が入ります。努力したのに「最後にこんな残念な結果になった」というように、結果が悪いことのほうに気持ちがおかれているように思います。
「クビになった」「卒業できずに帰国した」「何も解決しなかった」など、前件の努力に対して結果が見合っていないという気持ちが強いようです。
かいなく(かいがなく・かいもなく)
ちょっと「あげく」に似ているところもありますが…。話すときは「が」「も」が脱けることが多いですね。
- 料理を作ったかいなく、誰も手を付けてくれなかった。
- 沖縄まで来たかいなく、雨が降り続いて海で遊べなかった。
- 手術をしたかいなく、病気は悪化してしまった。
こちらも残念な結果になっていますが、どちらかというと、その結果が出るまでの行為に意味がなかったというようなところに気持ちが置かれているようです。
結果にたいして、「料理を作った」「沖縄まで来た」「手術をした」というというプロセスに意味がなかったと感じているときに使うのではないでしょうか。反対は「かいがあって」ですね。大変だったけど、つらかったけど〜したことで効果や成果が得られて、いい結果になったというときに使います。
日本語には「話し手の主観的な心的態度」を表す「モダリティ」表現が多くあります。さりげなく気持ちを一文に入れ込んでくるんですよね。これはなかなか学習者には理解しがたいのでは。同じ残念な結果を表す文型でも、理由を表すもの、後悔を表すもの、結果を嘆くもの、プロセスを嘆くものなど気持ちの面で見るといろいろ違いがあります。レッスンの際に、「この表現を使うときはこんな気持ちのとき」と伝えられると理解が深まるかもしれません。
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