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日本語教師の先輩体験談~ポーランドで日本語を教える~
今日は、ポーランドで日本語を教えていたCさんにお話を伺いました。写真はCさん提供のポーランド食器だそうです。素朴な温かみがあって素敵ですね。
実はCさんはスロバキア編でお話を伺ったCさんと同じ方です。ポーランドに関しても編集部もあまり基礎知識がないため、Cさんの体験談の前にポーランドの日本語教育事情からお話しただきました。
ポーランドで日本語を教えている場所
ヨーロッパ随一の親日国と言われるポーランドで日本語を教えてみませんか。
中等教育機関(ギムナジウム、日本でいう高校レベル)
ギムナジウムでは、日本の民間団体によって派遣されたボランティア日本語教師が自由選択科目、あるいは課外活動として開講されている講座を担当しています。日本語はもちろん、日本のことをよく知るための文化紹介も行われています。
高等教育機関(大学)
日本学(日本文学、文化)のある学部では、教員は日本語教師よりも研究者の方が多いのに対し、言語学専攻の学部では、主に日本人教師による授業が行われています。大学によっては、文法はポーランド人教師、会話や作文の授業はネイティブの日本語教師が担当している所もあります。
日本語専攻の学部がある大学では、長年在住し勤務している日本語教師が中心で、新規採用は少ないですが、稀に求人サイトで募集があります。常勤講師であれば修士号以上の取得がほぼ必須です。
日本語教育が主専攻以外で行われている大学では、教師は学士号保持者でも採用されますが、多くは報酬がありません。その代わり宿舎、光熱費等の提供があります。
その他の教育機関
一般市民向けの日本語学校や文化センターなどが各地にあり、近年はポップカルチャーへの関心からか特に中高生の学習者が増えています。
日本から教師を招聘するとコストがかかるため現地採用がメインですが、インターンシップやボランティア講師として活躍している人も多いです。
ICEA(アイセア) からの派遣
2004年ポーランドのEU加盟を受けJICAが撤退した後、民間日本語教師派遣団体ICEA(International Cross-cultural Exchange Association)が引き継いで、毎年10名前後、原則1~2年の契約でポーランド各地のギムナジウム、大学、文化センターなどに派遣されています。派遣先により報酬の有無が異なります。
また語学の授業の他に、茶道、折り紙、書道、着付け、あるいは武術、芸能、ポップカルチャーを紹介したり、各地の日本フェスに参加して文化紹介をする機会もたくさんあります。
日本語教師としてポーランドに渡る準備
ポーランドのビザ
所属先によって異なりますが、ボランティア講師・インターンシップとして渡航する場合は、必要書類をそろえ、各自で長期滞在ビザを申請します。日本で取得できます。
ただしインターンシップの場合、年齢制限があるので学校のホームページで確認が必要です。
ポーランド語を学ぶ
若い世代、都市部のカフェやレストランでは英語が通じますが、地方では通じません。地域、世代によってはロシア語の方が通じます。その場合、相手の返事はポーランド語という事も多いですが、コミュニケーションは成り立つようです。
ポーランド語はメジャー言語ではないため、日本人が少しでもポーランド語を話すと皆さんとても喜んでくれます。渡航前は挨拶や簡単な会話を少しでも習得しておくといいでしょう。
またポーランドの日本語教師の求人に当たり、たいていの場合は英語での履歴書提出が求められ、授業も間接法で行う学校もあるので、英語ができるに越したことはありません。
ポーランドの歴史を知る
ポーランドといえば、日本から遠く離れていて馴染みがない方もいらっしゃるかもしれませんが、実は19世紀後半以降文化・学術交流が重ねられてきたところです。またロシア革命後の混乱期に出兵した先のシベリアでポーランド人の戦争孤児たちが日本に引き取られ、その後全員回復して無事帰国することができたという史実があります。私も「ポーランド人は日本人に助けられたんだよ。ありがとう」とバス停で知らない人に話しかけられた事もありました。
またポーランド政府は、阪神・淡路大震災や東日本大震災で被災した日本の子供たちを自国に招いて心の傷を癒してくれました。長年このような交流も続いています。
ポーランドの生活・その他
主要都市にはアジアンショップがあり割高ではありますが食材は手に入ります。テキストは手に入りません。電子化されていないテキストや参考書は持って行ったほうがいいでしょう。
前述のように、日本語の他に文化紹介をする機会も多いので、何か用意して行った方がいいです。
冬は寒さが厳しく、地域によっては最低気温がマイナス20度を下回る事もあります。寒さ対策も必須ですが、持って行くのにはかさばるので現地調達でもいいでしょう。ただ足が小さい方は日本でスノーブーツなどを用意していく事をおすすめします。
ポーランドでの日本語レッスン
直接法?間接法?
学校によって異なります。日本語が主専攻の大学では、基本的に直接法ですが、文法解説などをポーランド語、または英語で行う所もあります。
週に1回しかない授業を行う日本語講座や語学学校では、ポーランド語、英語での間接法による授業もあります。
IT・視聴覚機材
大学ではパソコンやプロジェクターが利用されています。またインターネットを活用して日本の学生との交流なども行われています。
語学学校では電子ホワイトボードを使った授業も最近は多いようですが、まだまだ黒板を使っている機関もあり、設備の差があるようです。
ポーランド人の日本語の学習動機
以前は日本語主専攻の大学では将来のビジネスの為に日本語を学んでいる人は少数派で、伝統文化、文学研究、翻訳、学術研究志向の学生が多くいました。ブリグジット以降、日本企業がポーランドに進出し、ビジネスの為に日本語を学びたいという学生も増えつつあります。
その他の大学や語学学校、ギムナジウムでは、アニメや映画などポップカルチャーをきっかけに日本に興味をもって日本語を学んでいる学習者が多いです。
日本語教師としてポーランドへ行ったきっかけ
私は趣味がダイビングで、はじめはアジアで日本語教師!と思っていたのですが、ある日見たクイズ番組で「波蘭」と書いて「ポーランド」と読むという事を知り、興味を持ちました。そして「ポーランド 日本語教師」を検索。ところが、ポーランドでは日本語教師ができる所が意外に少ないという事を知りました。その中で唯一、民間のボランティア日本語教師派遣団体「ICEA」の存在を知り、すぐに応募しました。10年ほど前のヨーロッパでは日本語教師の求人がほぼなく、ボランティア講師ばかりでした。
準備としては以下のことがありました。
・長期滞在ビザの申請(在京ポーランド大使館で可)
・文化紹介ができる物を準備。学生時代に茶道と着付けを習っていたのですが忘れていたので、渡航が決まってから半年間、もう一度習いに行きました。
・ポーランド語はICEAのプログラムに、渡航後4週間のサバイバルレッスンがあったので、渡航前は必要ないと思いほとんど勉強しませんでした。
ポーランドでの日本語教師生活
レッスン
私が派遣された大学は自由選択科目としての「日本語」でしたので、授業はほとんどが15時以降で90分授業を1日2~3コマ、入門レベルからN1レベルまで担当しました。日本語教師は私1人だったので文法解説、会話、作文、漢字など一人で教えました。大学によっては分担する所もあります。
毎年約100名以上の受講希望者がいましたが、自分の研究が忙しくなったりして途中で脱落する学生も多いです。
週に1日は市民講座でも教えていました。中学生から社会人までのクラスで、アニメや武道がきっかけで入ってきた人が多く、その講座には合計約50人位の受講者が集まりました。
待遇
私はボランティア講師だったので、報酬はありませんでしたが、住居・光熱費は提供されました。
もちろん地域や語学指導経験によって待遇が異なります。ある語学学校では、現在月額3000~4000ポーランドズウォチ(日本円で8万5千円~11万円くらい)で、宿舎の提供はありません。
物価は日本の半分くらいなので、他のヨーロッパ諸国に比べるとかなり安いです。
良かったこと
熱心な学生がとても多いです。自由選択科目(単位がない)の「日本語」でも、毎回参加し、漢字をノートに細かく一面に書いてきたり、毎日日記を書いて見せてくれたりする学生もたくさんいました。授業では前の席からうまり、楽しそうに受けてくれました。質問も的を射ていてレベルが高く、必須科目でもないのにJLPTの合格を目指して頑張る学生が多かったです。
大変だったこと
ポーランド各地で開催される日本関連イベントには、幅広いテーマがあり長く続いているので、日本語だけではなく日本文化の伝達にも力を注いでいる教師が多いです。私も色々なイベントに参加して、茶道や着付けのデモンストレーションをしたり、盆踊り、能、俳句のレクチャーなどもしました。ポーランドの人も比較的日本の事をよく知っているので、飽きられないよう、さらにひと工夫つけ加えなければなりません。そのため、準備は大変でしたが、私にとっては大変いい経験になりました。
ポーランドで日本語教師を検討されている方へ
日本語教師の求人が少ないヨーロッパで、それでも比較的チャンスがあるのがポーランドです。治安がよく、人々はフレンドリーで、助け合いやおもてなしの精神で接してくれます。ヨーロッパの雰囲気や歴史を深く感じることができます。物価が安いポーランドでは、日本では高価なオペラやクラッシックコンサートもリーズナブルな値段で楽しめます。
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